Scribble at 2026-05-27 13:26:15 Last modified: 2026-05-27 13:58:47
昨日、管理系の部門で働くスタッフが一堂に会して(といっても7名ほどだが)会議を開くので出社していたのだが、いつものとおり出社すると昼前後にジュンク堂へ足を向けていた。そのときに、理由を忘れていたのだけれど、なんとなく TypeScript をしっかり勉強しないといけないなという意気込みがあって、幾つかの本を物色していたのであった。
でも、現地で何冊かの本を眺めているうちに Bun を使うために学んでおこうとしたのを思い出したのだった。そして、結局は TypeScript についてもオンラインのリソースだけで足りると判断して、本を買うのは止めたのである。だが、少し調べてみると Bun は Anthropic に買収されてから生成 AI をサポートする機能を増やすような動きになっていたり、そもそも Bun というラインタイムそのものの開発体制も生成 AI に大きく依存する "vibe coding" を採用したとのことで、多くのエンジニアから批判や憂慮の声が上がっているようだ。
「バイブ・コーディング」というのは、簡単に言えば kintone のコマーシャルでやってる「ノーコード開発」のことだ。「アップロードした Excel シートの数値を全て集計して」と命じたら、生成 AI が Excel シートをアップロードするフォームを作ってくれて、集計するロジックだとか、データを保存するデータベースへのクエリだとかも勝手にコードとして生成して、要するにウェブ・アプリケーションを作ってくれる。なので、VB どころか Excel のマクロすら書いたことがない経理のおねーさんが販売管理システムみたいなものを自分の言葉(自然言語)だけで作れるようになるというわけだ。もちろん、一度の命令だけで完全なコードが出来上がるかどうかは分からないので、その修正や調整も自然言語で伝えてゆく。つまりは、中身がよく分からないにしても、自分の与える命令なり入力に正しく応答してくれる道具を作れたらいいというわけなので、或る意味では「待望のサービス」なのかもしれない。
開発とは別の話題ではあるが、僕の利用している画像生成 AI にしても、僕自身はイラストや漫画を全く描く才能がないし、写実的な画像を生み出すための写真技術を訓練するつもりもないので、画像生成 AI を使って大量の画像やイラストを作れるようになったことは、単純にありがたいし楽しい。なので、バイブ・コーディングというコンセプトそのものを「ソフトウェア・エンジニアリングに対する挑戦」だと眉に唾をつけるような態度は、学者や評論家のスタンスとしては芸風だろうからいいとしても、企業で色々なスキルや知識や職能の人々が使うツールを提供したりサポートする立場としては、望ましくないと思う。もちろん、バイブ・コーディングで業務に使えるツールを作っている人々を「次世代のエンジニア」だと思っているわけではない。しょせん動作原理を理解しておらず、したがって動作原理を原因とする脆弱性にも理解がない人々は、生成 AI を仕事として安全に使うための環境をエンジニアに整備してもらったり保護してもらう必要があるからだ。そして、仮にネットワーク通信に障害が起きたり、生成 AI を使うサービスに問題が起きたり、あるいは自分のパソコンに何かあっても、従来通りの仕事を続けられなくてはいけないという意味で、もともと持っている企業人としてのスキルを放棄したり軽んじてよいわけでもなかろう。
なんにしても Bun は小さなプログラムとして使い勝手が良さそうという印象があったのだけど、あれもこれもと一つの実行ファイルに詰め込むというのは、それが単純な目的のプログラムならともかく、いまの Bun のようにウェブ・サーバのようにふるまうほど多機能なツールになってくると、セキュリティの実務家としては単なる SPOF でしかないという気がする。ということで、これを使うために勉強しようかなと思っていた TypeScript に対する興味も失われてしまった。それに、Bun だけではなく TypeScript についても、もともと Microsoft が提供している処理系というのも別のリスクがあるような気がするし。JavaScript とはともかく、サーバ・サイドの JavaScript 系の言語とは、僕は縁がないのだろう。