Scribble at 2024-01-15 13:45:25 Last modified: unmodified

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少子化に歯止めがかからない原因はどこにあるのか。昨年の民間調査では、18~25歳までのいわゆる「Z世代」の45%が、「将来子供を持ちたくない」という衝撃的なデータも明らかになった。彼らの生の声を聞くと、経済的な理由だけにとどまらない、社会の構造的な問題が浮き上がる。

18~25歳の45%が「将来、子供ほしくない」 仕事は充実、結婚も急がない

これはメディア・リテラシーの教材として取り上げるべき記事だと言って良い。つまり、ここで話題になっている少子化とか Z 世代とか教育費というキーワードに注目するのではなく、マスコミというのがいかに自分たちの煽りたいネタを巧妙に捏造するかという点に注目するのだ。

そもそも冒頭の太字で強調されている文章すら、一つ一つ丁寧に考えてゆくと、怪しいフレーズがたくさんある。たとえばいの一番に書かれている「少子化に歯止めがかからない原因はどこにあるのか」という文は、典型的な loaded language である。"loaded language" というのは、特定の偏見とか意見が最初から刷り込まれているのに、あたかも客観的に事実を記述したり説明しているかのように見せかけている、インチキ表現のことだ。大昔は「ロゴロジー(言語力学とか言語政治学)」などと呼ばれたこともあったが、この国ではメディア・リテラシーを取り上げると、まさにメディア企業が邪魔したり矮小化したり無視する傾向にあるので、教育機関や学校でも殆ど取り上げられずに、いまだにこうして「ロゴロジー」という言葉をかろうじて覚えている人間が取り上げないといけない。僕はもちろん出羽守ではないけれど、やはりこういう話題も「欧米では」既に人権の一部としてメディア・リテラシー教育は当たり前のように普及しているのだが、日本のメディアはそういう事実もやはり取り上げない。自分たちが政治家の秘書や国家官僚と一緒に風俗へ通い詰める資金と根性くらいしか取り柄がない無知無教養どころか、報道機関としてのスキルや分析能力すらない、広告代理店の二次営業であることがバレてしまうからだ。

ということで、「少子化に歯止めがかからない原因はどこにあるのか」などと言われても読み流していてはいけない。少なくとも、「少子化とはどういう状況のことなのか」とか「いま日本はどこでも少子化なのか。地方ごとに違うのか」とか「少子化に歯止めがかかるとは、どうなることを言うのか」とか「少子化に歯止めがかからないと言うが、それは事実なのか」とか、あるいは「そもそも少子化になると何がいけないのか。寧ろ日本はこれまで人口が多すぎたのではないのか」といったことまで注意を払わないといけない。すると、「少子化に歯止めがかからない原因はどこにあるのか」などと深刻ぶっていても、それは幾つもの思い込みとか、論点先取という錯覚や錯誤によるものだという可能性も考えられるようになる。確かに、その結果としてポピュリスト的な政策を支持したり、リバタリアンの政策を支持したりするという結果にもなるとは思うが、少なくとも新聞にこう書いてあったなどというだけのロボットよりはマシである。そんなもん、関東大震災のときに朝鮮人や中国人を虐殺した東京のクズ日本人どもと同じだし、太平洋戦争を煽った新聞(その中心が、いまとをきめく自称リベラルの朝日新聞だ)に左右されて愚かな戦争に邁進したわれわれの誠に愚かな先祖(その多くは不幸にも亡くなってしまったわけだが、別に英霊でもなんでもない)と同じである。

そして、次の「昨年の民間調査では、18~25歳までのいわゆる『Z世代』の45%が、『将来子供を持ちたくない』という衝撃的なデータ」などと書いているが、これは明らかにウソである。記事を読めばすぐに分かるとおり、この民間調査とやらは「未婚で子供もいない人」のうちで結婚や子供と無縁でいたいという人の数を数えているにすぎない。すると、こんな計算は中学生になると誰もが学校で教わると思うが、無作為に選んだ1,000人のうち、「未婚で子供もいない人」がどれだけいるかによって、その1,000人の中での割合なんていくらでも変わるということが分かるはずだ。極端な例で言うと、1,000人のうち未婚で子供もいない人が999人だったとして、その半数近くが結婚も子供も無縁でいいと答えたなら、調査した人の半分近くが結婚も子供も無縁でいいと思っているという「衝撃的な」データと言えるかもしれないが(僕はそれでも「衝撃的」という表現は loaded language だと思う。半分がそうだからといって、それがいったい何なのかという気がする)、仮に1,000人のうち未婚で子供もいない人が500人だったらどうか。その半分ということは、全体の数から言えば 1/4 がそう思っているだけだということになる。未婚で子供もいない人の割合がもっと少なければ、その割合はもっと少なくなるわけで、つまりは「未婚で子供もいない人」が調査した対象の何割だったのかがわからない限り、こんな統計には社会科学的な価値などまったくないのである。単に「若けーやつは結婚も子供も関係ねーんだってよー」と新橋のプラットフォームで吠えている酔っ払いのオッサンと同じだ。

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