Scribble at 2022-12-03 12:21:55 Last modified: 2022-12-03 12:31:18

A person gives you a whole book they wrote for free and you're complaining about asking for an email? WTF

Show HN: I wrote a free eBook about many lesser-known/secret database tricks (sqlfordevs.com)

スレッドの最上位の階層にあるコメントなのに、いったい誰に向かってリプライしてるのか不明な発言だが、この手の話題は "free" という言葉をめぐって頻繁に繰り返され、そして何の結論も出ないままに数十年が経過していると思われる。たぶん、"privacy" のような観念と同じく、何を良し悪しの基準にして納得するべきかが法律や教育で規制したり矯正できない話題なので、内心や言論の自由が保障されている国では永遠に終わらない議論なのだろう。

僕は、何らかの個人情報に連携させてメール・アドレスを取得したり、そのメール・アカウントでメッセージをやりとりするという事実に何らかの価値があったり、あるいは特定のメール・アドレスから僕という個人を利用者として突き止められる技術なり法的な規制がある以上は、現実の請求金額として「無料」となっていても、無料で取得できるメール・アドレスはサービスなのであって、実質的には "free lunch" だと思う。(「フリーランチはない」というフレーズが使われるので "free lunch" という表現が出てくると反射的に「無料のサービス」と訳す人がいるのだけれど、既に "free lunch" だけで「他の方法で収益を上げる販売手法」という意味がある。)

https://www.npr.org/sections/money/2012/07/13/156737801/the-cost-of-free-doughnuts-70-years-of-regret

上記の Hacker News のスレッドで pubby というユーザが紹介している、10年前に NPR が掲載したリポートをご紹介しておこう。これは、第二次世界大戦時にヨーロッパ戦役へ従軍したアメリカ兵に、赤十字が "free" のドーナツを提供していた話である。最初、赤十字は無償でドーナツを提供していたのだが、或るときから政府に要求されて料金を請求するようになったせいで、帰還兵の多くに修復不能なほどの悪い印象を与えてしまった("It's the story of how one small mistake moving away from free can cause trouble that's impossible to fix.")。もちろん、ここで取り上げているデータベースの電子書籍を書いた著者が、後から本をアマゾンなどで販売し始めるかどうかは知らない。それに、いったん電子書籍をダウンロードした人にとっては、後から有料になろうと知ったことではないのだろう。なぜならドーナツのように、アメリカ人なら従軍兵士だろうと大統領だろうと、猿かと思うくらい何度も手を出すようなものではないからだ。しかし、この電子書籍は少なくとも現時点ですらメール・アドレスを求めているわけであって、それが対価としてではなく後から改訂版を出すときの通知用に求めているだけだったとしても、あるいはたとえ無料でメール・アドレス(捨てアド)を作れるとしても、pubby のようにこう言えるだろう。"People just view items that cost something differently than genuinely free items, and not in a rational, economic way." (本当に無償で提供されていないなら、経済的な意味で無料だと言われても、人はそれには何らかのコストがかかると考える。)

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