Scribble at 2025-01-07 08:51:11 Last modified: unmodified

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All clocks are 30 seconds late (victorpoughon.fr)

Hacker News ではけっこうな数のコメントや upvoting が付いてるけど、初見ではただの clickbait に思えてしまうから注意が必要な話題だ。だって、秒針や秒の表示がある時計に「30秒の遅れ」なんてあるわけないんだから。それはただの電池切れか故障した時計だろう。それを「全ての時計」なんていう雑なくくりで人の関心を手繰り寄せてるだけなら、この記事は確かに clickbait と言える。つまり、こういうタイトルの書き方をされたら、何か物理的あるいは工学的な限界でもあるのかと一瞬は興味をもってしまうんだけど、0.2秒後には馬鹿げてると思い直すというわけだ。でも、実際に記事を読むと、実はテーマはそういうことではない。

この話題は、30秒がどうのということが重要なのではなく、時刻の数学的に厳密な表示などそもそも不可能である(つまり有限のメモリしかないコンピュータが実数を厳密には扱えないという議論と同じである)という話として理解すれば Hacker News で展開されているような興味深い議論へ続けられる。

そしてもう一つが、人は時刻についてどういう観念あるいは尺度や判断基準をもっているかという認知的な話題としても興味がある。コメントにもあるとおり、13時に会議が予定されていて自分の(秒が表示されない)デジタル腕時計に「13:00」と表示されたら、会議に遅刻したと思う人もいれば、そう思わない人もいるということである。僕は、会議が開始される時刻にあらかじめ着席していないこと自体が「負け」だと思う質なので、だいたいどういう会議や待ち合わせでも決められた時刻より前に着こうとする習慣がある。待ち合わせ時刻の10分や15分前だとか、会議の15分前に着席するなんて時間の無駄だと思うかもしれないし、場合によっては就業開始時刻の前にタイム・カードを打刻する昭和時代の労働慣行を彷彿とさせる「体育会系の脳筋サラリーマン」の典型的な思考だと揶揄する人もいようが、考えてもみてほしい。13時ちょうどに着くなんてことは、そもそもそんな行動にこそ無理があると思わないだろうか。僕は、むしろ正確な時刻を基準にして行動するすることは難しいと思っているからこそ、10分前に着席してもいいように、そこまでの予定を余裕をもって進めるようにしているし、他人にもそうしてもらいたいと思う。

うちの会社でも、たとえば経営会議のようなレベルですら毎回のように遅刻する人がいて、二言目には顧客対応だの何のと「お客様」という言葉を持ち出せばどうにでも言い訳になると思っているらしい。こういうインチキ顧客第一主義こそ、会社の資金を浪費させる元凶だし、馬鹿げた業務に時間や労力を注ぎ込む元凶である。こんな新卒に言うようなことを書くのはお恥ずかしいが、自分たちのやることを正確にコントロールできてこそ、顧客のニーズにも正確に応答できるというものだ。ビジネスの取引関係の基礎は、やはり相手の応答が予測可能であることが基本になるのだ。

なお、ビジネスにおいてはたいていの時間の制御は切り上げであるいっぽう、たいていの成果は切り捨てで思考し、生産性は低く見積もることが目標の立て方の基礎になる。これはマゾヒストだからではなく、自分の能力を過大評価しないためのリスク対策でもある。

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