Scribble at 2024-05-10 12:50:25 Last modified: unmodified
特定の遺伝子疾患をもっていて耳が聞こえなくなって生まれた子供の耳の細胞に、欠落しているタンパク質を修復した遺伝子をもつ細胞を移植して、子供が聴覚を取り戻したという成果が報告されている。そして、修復した遺伝子の状態は永続するため、薬とは違って1回きりの治療で終わるという点で、コスト・パフォーマンスにも利点がある。もちろん、遺伝子治療には未知のリスクがありえるので、無条件に手放しでやれやれと言ってよいとは思わないが、成果としてはひとまず歓迎できるだろう。
そして、こういう事例を眺めていると不思議な気分を覚える。つまり、こういうことって他の生物はやらないしできないわけじゃん。そもそも他の生物種に、グルーミングはあるにしても、「医療行為」の概念に相当するようなことがあるのかというと、どうもなさそうであると。じゃあ、なんでヒトだけがこんなことをやるんだろう。できるんだろうか。確かにヒトは生物種の進化の最終形ではないし、そもそも進化に「最終形」なんて概念はありえないわけだけど(生物学で言う「進化」というのは、「変化」や「変異」という意味に近い)、ヒトが何らかの意味で他の生物種と比べてギャップがあるとすれば、この他人による医療行為じゃないかと思うんだよね。技術的にも文化的にも、かなり特異なことだ(必ずしも優劣を意味する必要はない)。