Scribble at 2021-04-19 13:04:26 Last modified: 2021-04-20 09:37:24

Windows の環境で開発してる人の話を聞くと Apache を使う人が圧倒的に多い。Nginx の導入を検討したいという人はそれなりの数でいても、実際に Nginx を使っていてプロダクション・サーバにも採用している人は、それなりにシェアも伸びてきて話題に登る機会が多い割に、実際のところ多くないという印象がある。ウェブ・サーバのシェアというものは、会社ごとに導入を決めると業容によっては一斉に数千台が替わるので、僕らのようにバランサすら使わないような規模のウェブサイトを実装している技術者の状況では、世界規模で見たシェアの数字には、さほどリアリティがない。

特にローカルの開発環境では IIS と同じ程度の普及率ではないか。その最大の原因は、もちろん XAMPP の圧倒的な普及率を覆すだけの利便性が Nginx にないという事実に尽きていると思う。そもそも、PHP がこれだけのシェアを獲得して小中規模のウェブ・アプリケーションでデファクト・スタンダードの地位を Perl から奪い取ってしまったのも(mixi が Perl の国内コミュニティを主導していた話なんて、もう20代のプログラマは殆ど知らないのではないか)、CGI でいちいち shebang 行を書く面倒臭さをモジュール式の PHP で置き換える手順が色々なところで説明されたからだ。それと同じく、Windows サービスに登録するディフォールトの手法が Nginx にはなくて(Nginx はいまでも PowerShell やコマンド・プロンプトのバッチ・ファイルを手動で登録しなくてはならず、その書き方も公式には存在しない)、まともな書籍も少ないというドキュメンテーションの圧倒的な貧弱さにも理由はあろう。無料で最新の「情報」がオンラインにありさえすれば普及するなどというのは、未熟な社会科学の知識しか持っていない IT 関連のライターなどがよく書いている妄想である。

そして、何日か前にも書いたことと同じ主旨だが、僕は Nginx のマーケティングが基本的に失敗しているという点にも理由があると思っている。もう IaaS が低料金で利用できる時代にあって、「何%速い」といったパフォーマンスしかセールス文句がないプロダクトなんて誰も必要を感じないからだ。仮に Nginx が Apache よりも PHP の実行性能として 30% 速いとしても、たいていのソフトウェア・アーキテクトはクラウド・サービスのインスタンスをスケール・アップして Apache を使い続けるだろう。既存の環境を置き換えて起きるリスクを考えたら、ビジネスにおいてはそれが正しいし、僕は情報セキュリティの実務家としてもその判断を支持する(もちろん、Nginx がもともとロシア人のコードだから危ないと言っているわけではない)。

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