Scribble at 2023-04-16 21:38:14 Last modified: 2023-04-16 21:40:48

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How To Properly Set the Bevel on Your Straight Razor Blade EP2

ここでは何度か言ってることだが、剃刀以外の刃物しか研いでいない研ぎ師の解説というのは、剃刀については殆ど参考にならない。包丁やナイフとは全く刃先の仕組みが違っているし、研ぐ基準も違うからだ。たとえば、ナイフやカッターていどの切れ味でいいなら、もう既に僕はいくらでも研げる。でも、剃刀はぜんぜん剃れる刃先(bevel)が付けられない。

その理由の一つは、この研ぐという作業が感覚に頼っていて客観的な基準を示す研ぎ師が殆どいないからだ。わずかに顕微鏡などを使っている人たちでも、顕微鏡で何がどう分かるのかという解析手法を金属学や材料工学の観点からぜんぜん説明できておらず、単に刃先を拡大して良いの悪いのと、結局は同じように感覚的な話をしているにすぎない。そうした、天然砥石の自慢話や高価な顕微鏡の自慢なんて、生活の道具として剃刀を使いたいと思っている人間にしてみれば、はっきり言ってどうだっていいことだ。男というものは、京都の山で採れた20万円の砥石なんて持っていなくても数千年前から髭を剃ってきて、世に誇れる無数の業績を叩き出してきている。

もちろん、剃刀に拘ってもいいし、研ぐ技能に拘ってもいい。それは趣味として好きにやれることである。でも、趣味だからといっていい加減なことをしていいとは思わないからこそ、こうして髭剃りを趣味にしつつある者の一人として何度か苦言を述べている。たとえば、上の動画は購入したばかりや破損した剃刀の bevel を作るための参考になるとして、しばしばブログ記事などでも紹介されている。でも、僕はこの動画の解説は駄目だと思う。なぜなら、何が「研げていることになるか」という基準が全く説明されていないからだ。#1,000 という番手の砥石で何回か剃刀を研ぐ。そんなことだけで刃先が付くわけないのだ。基準を満たしているからこそ、その回数で十分だとか不足しているといった議論ができるのである。拡大鏡で刃先を眺めているだけで何の条件も語らずにいたのでは、動画を観ている多くの人たちは、同じ回数だけ剃刀を砥石の上で「動かす」だけに終わる。そんなことで bevel は絶対に作れないのである。

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