2018年10月24日に初出の投稿

Last modified: 2018-10-24

American democracy is fracturing. Libraries say they know how to help

日本でも「スタバ図書館」といった事案で、図書館の意義についても幾らかの論議が出たと思うのだが、ここまで明け透けな議論はなかったと思う。多くの非難を浴びて削除されたという Forbes の論説は読んでないけれど、Amazon で本を買える人しか考慮してないとか、Amazon の電子書籍の一部は無料だと言ってもリーダや通信費は無料ではないのだから、なんにせよ Forbes の論説は炎上商法でないなら、ていどの低いリバタリアンが書いた駄文なのだろう。そして、Forbes が成金御用達の経済・金融メディアであるのは、The Economist や WSJ などと比べて読んでいる人なら誰でも知っていることだが、大統領に似たような思考の人物が居座っているおかげで、いよいよイエロージャーナリズムの本領発揮といったところだ。

もちろん、図書館があるからこそ国が民主的に「なったり」平和に「なる」わけではない。因果関係は逆であり、ほんものの戦場には図書館どころかスターバックスやキャバクラもないし、ほんものの専制国家に図書館があろうと配架されているのは『共産党宣言』や『毛沢東語録』や国家元首の様子が掲載された写真集ばかりだろう。我が国においても、新しく配架されている本や、書庫から知らないあいだに除籍されている本を調べてみたら、実際のところは幻冬舎のようなクズ出版社から出ているヘイト本や嘘八百の芸能人本ばかりが増えて、イデオロギーのあるなしはあろうと、まともな本がどんどん無くなっている可能性だってある。

次に、Forbes にものを書いているような人々が、いまだに「書籍 vs. 電子書籍」という愚かな対立を煽っているという点に着目してみよう。実のところ、電子書籍には書籍と比べて劣る点がある。その欠点は、もちろん電気がなければ役に立たないことだ。書籍は陽が昇るだけで読めるし、視覚とは関係なく電子書籍は朗読に対応できるというインクルーシブを訴えるなら、視覚障碍者は OCR の朗読アプリケーションを使って書籍を利用すればいい。しかし、電気がなくなれば電子書籍は障害のあるなしに関わらず誰一人として利用できないが、書籍は視覚の健常者だけなら利用できる。また、美術や建築の専門家なら誰でも実感があるように、電子書籍は閲覧する機器の画面の大きさでしか絵画や図面を表示できないため、一覧性に欠ける。10インチのモニターに建築物の設計図や絵画の全体像を表示しても、殆ど専門家として吟味するにあたっては殆ど役に立たないだろう。もちろん、電子書籍の強力な利点もある。情報媒体としての劣化がないため(利用するための電子機器の劣化はあるが)、稀覯本を1度スキャンすれば多人数が何度でも閲覧できる。もちろん、稀覯本の材質や裏面の様子といった、実物を調べなければ分からないようなことは、専門の技師や研究者がアプローチすればいい。それよりも、素人や子供がデータとしての稀覯本へ自由にアクセスできるという効用の方にインパクトがあろう。こういうわけで、どちらにも利点や欠点があり、いまだに両者が二者択一であるかのように言い立てて、なおかつ電子書籍が書籍を置き換える「べき」であるか、置き換えるのが自然ななりゆきであるかのように言っているのは、はっきり言って書籍や電子書籍をロクに使っていない、コタツ記事のバイト学生と同じていどの人物だとしか思えない。

もちろん VR/AR によって、書籍がもっている幾つかの利点はカバーされてしまうかもしれない。設計図や絵画をそのままの実物大で眺めているかのような見栄えを VR なり AR を使って再現できるなら、一覧性に欠けるという欠点は単にデバイスの限界でしかなく、電子書籍という媒体の限界ではないからだ。また、電気がなければ役に立たないのは事実だが、逆に言って電気もないような状況で(通信する必要はあるにしても)本を読む必要などあるのかという議論は残るだろう。なんとなれば、我々は(善く)生きるために読むのであって、読むために生きているわけではないからだ。しかし、そう言えるのは僕らのように選択の余地がまだある人間の傲慢であるとも言い得る。一口に、いまでは小学生でも iPhone を持っているような時代になったとは言うが、本当に貧しい家庭では大人ですら誰もスマートフォンや携帯電話をもっていない可能性が(特に海外では)ある。

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