Scribble at 2024-03-07 20:19:38 Last modified: 2024-03-07 21:04:33

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東京都内の私立中で2月、1年生の半数超が理科の課題に対する解答を間違う事態が起きた。原因となったのは、生成AI(人工知能)が表示した“誤答”。食品大手「キユーピー」がホームページ(HP)に載せていた記述を基に生成し、生徒たちが書き写していた。男性教諭に記述の誤りを指摘された同社は、誤解を招きかねない表現があったとして修正した。

中学1年生250人の半数超、理科の課題で同じ間違い…教諭の違和感の正体は生成AIの「誤答」

まず最初に言っておきたいのは、生徒が生成 AI を利用すること自体は間違いでもなければ不正でもない。そもそも、教師から課題が出て、そして生徒が知らないことを調べるのであれば、どういう方法であろうと何かを参照しなくてはならないのは当然のことだ。親に聞くとか、図書館で調べるとか、そしていまでは検索したり Gemini に尋ねたりするというわけである。調べ物の手段として考えるなら、生成 AI に質問することは不正でもなければ異常でもない。

問題は、生徒には回答が妥当であるかどうかを判断する基準がないということだ。これは、ネットがない時代でも言えることであって、たとえば僕らが小学生の頃に「大阪市内の江戸時代の史跡を5つ調べてきなさい」などという課題を出されて調べるようなときでも、同じような問題が起きる可能性はある。つまり、多くの生徒が学校の図書館にある『大阪の江戸時代の史跡』なんていう本を借りて読んだとしよう。しかし、その本に高い頻度でデタラメが書いてあったとすれば、その本から適当に5つの史跡を選んで回答なりレポートを書いた生徒の多くは、デタラメを回答してしまうことになる。でも、そこに書いてあることがデタラメなのかどうか、生徒に判断する知識はない(だからこそ調べなくてはいけないのだ)。

すると、そういう場合に教師が生徒に教えるべきことは、特定の本を無視すべきかどうかとか、特定の本を参照しろと指示することではない。もし現代の教育現場に置き換えるなら、教師が教えるべきことは ChatGPT(「検索サイトの生成AI」と書かれているので、Bing にある ChatGPT のことだろう。Gemini は Google 検索のページではなく、別の専用サイトでなければ使えないからだ)を使わずに Gemini や Claude を使えというアドバイスではない。そうではなく、複数のリソースを使って検証しろということである。そもそも、昔からなのだが、学校教師というのは生徒に「調べ方」とか「勉強の仕方」とか「ノートの取り方」というのを教えようとしない。これはおかしい。そして、この事例も教師の指導不足が原因だろうと思う。

僕は神戸大学で博士課程の学生だった頃に、指導教官の森(匡史)先生のアシスタントとして学部や修士課程の授業とか演習の手伝いをしていたのだが、そのときも、課題を与えられた際に「何を」「どこで」「どうやって」調べたり、あるいはその課題について資料を得たはいいが「何について」「どう」考えたら良いのかわからないという学生が相当な割合でいることに驚いたものだった。国公立大学の学生ですら、そのレベルである。ましてや小中学生に、指導もせずに的確な調べ物なんて期待するほうが間違っている。そして、もし調べ方を丁寧に指導する余裕がないというなら、その代わりに「お兄さんや親に調べ方を聞きなさい」とでも言えばいい。そして、もし間違いがあっても、それを親のせいにするのではなく、親も巻き込んで考えるきっかけを作れば良いわけである。そういう余裕が学校教員にあるよう、教員のタスクはもっと減らさないといけない。

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