Scribble at 2023-09-09 17:49:13 Last modified: 2023-09-09 17:51:12
いま猿谷要氏の『アメリカ南部の旅』(岩波新書、1979)を読んでいる。読んでいるというよりも、この手の本は殆ど読み飛ばしていると言ったほうがいいかもしれない。ルポとしては何か価値があるかもしれないが、はっきり言って内容の大半はどこにどう旅したかという些末な記録が書かれているだけであり、それ自体に学ぶべきことは殆どないからだ。でも、こういう本が役に立つのは、現在では書店で見つけられないような本だとか、アメリカ人の多くも忘れているような人物を紹介してくれることにある。たとえば、もう日本人でアメリカのジミー・カーターという元大統領の事績に関心をもっている人など殆どいまい(ちなみに存命だが、今年に入って終末期医療へ移行したという)。この人物が、かなり腰のすわった黒人の人権擁護者であることは、本書で丁寧に説明されて理解できた。
そして、ここで紹介するのがキャサリン・ウィンダムという作家・民俗研究者だ。いまとなっては手に入れることが難しい、"Jeffrey books" と呼ばれる幽霊の話を集めた本が『アメリカ南部の旅』で紹介されていて、猿谷氏の解釈では南部の発展の遅れが反映されたのだろうという。つまり、教育程度が低い南部には怪談話が流行しやすかったのだろうというわけだが、21世紀になって先進国を自称している国でも、やれ水に話しかけると水が喜ぶなどとオカルトを小学校で教えている事例もあるし、「プログラミング教育」とやらで GAFA に匹敵する IT 企業の経営者が出現するなどという、オカルトにも勝るホラ話を真面目に語る官僚がいたりする国もある。ああ、たしか「ジャパン」とか言ったっけ。