Scribble at 2023-02-21 12:13:10 Last modified: 2023-02-22 22:04:36

いま替刃式の直刃剃刀について記事を書いているのだが、替刃をつかう剃刀が普及した機会というのは、おおよそ3回ほどあったことが分かっている。

まず最初に、ご承知のとおりキング・ジレットが世界中に売りまくった安全剃刀だ。20世紀の初頭に発売されて、アメリカでは文字通り飛ぶように売れた。そして、この時の特許の扱いに対応する経緯からジレットが選択した手法を "razor and blade method" などと言ったりして、今日でもプリンターとインク(本体は意外と安いがインクはどう考えても割高で、しかも簡単には止められないという状況を作り出す)のように幾つかのジャンルで応用されている(ただし、ジレットは最初からこういう手法を意図していたわけでもなかったという研究がある)。

次が1960年代であり、これは各国で感染症予防の取り組みがようやく始まった時期にあたる。特に、B型もしくはC型肝炎ウイルスへの感染を防ぐために、理容所や美容所での滅菌・殺菌処理が励行され始めた。しかし、この当時は現在の替刃式の剃刀が広く普及するまでの効果はなく、せいぜい西洋剃刀を熱湯消毒したり化学的な処方で殺菌するといった店が多かったらしい。

そして1980年代になると、これもいまでは世界史の教科書に掲載されているが、1981年に初めて HIV に感染した患者がアメリカで正式に報告されて、要するに「エイズ」が大きな話題となった。もちろん血液や体液を介しての感染ということから、剃刀や鋏や櫛を扱う理容所や美容所でも更に厳重な対策が求められ、各国で法律やレギュレーションが改定されたり作られていった。当たり前だが、そういうものがない国でも、替刃式の剃刀を使っていると客の前で見せない限りは客(あるいは観光客)が避けてしまうため、後進国だろうと貧しい国だろうと多くの国で理容師が替刃式の剃刀を使い始めたわけである。

あたりまえだが、そういう国で髭を剃っている人々は、フェザーの「アーティストクラブ」なんて買えない。2万円の剃刀なんて、実際には多くの国では一ヵ月どころか1年分の年収に近い(中央アフリカ共和国だと平均の年収で約7万円ていどだ。そして、我が国の統計でも分かるように、「平均年収」なんてものは新聞記者やテレビ局の調査能力ゼロの学卒が調べられる、一部上場企業の組合員の平均だったりするので、ぜんぜん実態を反映していない)。

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