Scribble at 2020-09-10 07:30:16 Last modified: 2020-09-10 07:32:44

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働き方改革やリモートワークの普及にともない、従来オフラインでおこなっていた業務をいかにしておこなうかは企業における重要な課題です。とくに、従来からの商慣習である契約における書面への押印プロセスは、典型的な課題となっています。電子契約プラットフォームβは、押印プロセスをオンラインで完結させる、お客様の課題を解決する電子サインサービスです。

電子契約 プラットフォームβ

先日も IPA から DX の達成度を自己診断するツールなんてものが紹介されていたわけだが、その実質的な中身は DX において重要なポイントを完全に無視している。

つまり、DX とは会社としての方針や事業を IT によって変えるというだけではなく、ステークホルダも含めた相互関係をもつすべてのセクターで、色々な変化が起きることにも対応しなければいけないという意味もあるわけで、単純にクラウド・サービスを導入しましたとか、あるいは決裁の手順として押印を辞めて上記のようなサービスを使いましたというだけでは、DX になっていない。つまり、DX は事業だけの話ではないのだが、仮に事業の話だけに限ったとしても、業務の合理化や IT 化によって生産性を上げるなどという矮小な話ではないのだ。

おそらく、そもそも稟議という業務プロセスに限定しても、物資の調達とか受発注といった会社の資産を変動させるに当たっての承認や判断の内容を具体的に記録として残すことによって、たとえば内部犯行とか背任的な行為あるいはもっと単純に無能な人間(役員だろうとバイトだろうと)が会社のお金を浪費したり、あるいは馬鹿げた条件で仕事を発注したり受注しないように是正することが目的の筈である。ただの記録であれば、類似のサービスである「クラウドサイン」にも言えるような厳密な証拠保全のテクノロジーは不要な筈だ。

結局、この場合に再考するべき課題は「押印文化」といった些末な話ではなく、決裁という業務プロセスが拠り所にしている「責任」という概念を見直すことにある。オンライン・サービスのボタンをクリックすれば「責任」を果たしたことになるのか。これは、何もコロナ禍とは関係なしに問うてよいことだし、経営者であればこそ敢えて問うべきことだと言ってもよい。このような事業や業務プロセスの根幹にかかわる概念の再考を経て、IT サービスを活用しながら、昔なら書類を渡したり押印を求めるべき相手(書類の用途に応じて、それは上長だったり取引先だったり部下だったりする)との関わりをどう改善していくかを考え直すことが重要で、その結果として自分たちだけではなく相手にも変化を促したり、あるいは相手が変化していることに対応できるようにして、ステークホルダも含めた色々な場面で方針だとか慣行だとか、あるいは従業員であれば生活スタイルや仕事の仕方、考え方も含めて変わるのが DX の実質であろう。教科書的には、それは「良い変化」だと定義されているが、僕はそれは愚かな定義だと思う。それは単なる結果論や願望を定義しているにすぎず、実際にはこういう変化によって一時的には混乱が生じるだろうし、長期的にも良いことばかりが起きるとは限らない。そんなことは社会科学とりわけ歴史をまじめに勉強してきた人間なら誰でも知っていることだろう。今般でこそ DX つまり digital な変革や転換が叫ばれているが、これまで人類の文明や文化はいくつかの transformations を経験してきており、必ずしも良い変化だけがもたらされたわけでないことくらい、小学校の歴史の教科書にすら書いてある。

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