Scribble at 2021-03-12 12:21:40 Last modified: 2021-03-12 12:44:20

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The New York Times には TimesMachine という紙面や記事のアーカイブがあって、デジタル版の購読者でも自由に検索して読める(ちなみに日付を指定して紙面を検索できるのだが、JavaScript の入力ボックスは Waterfox のような古いブラウザだと正しく動かない。それから日付の入力はアメリカ式なので、順番は "MM/DD/YYYY" である)。1851年9月18日の創刊号からデジタル化されていて、ほとんどの記事に要約テキストと書誌情報やシェア・ボタンが付けられている。このあたりは、要約など人手ではなく自動処理を使っているとは思うけれど、なかなかすごいコンテンツになっている。単純に英語の教材として眺めるだけでも、一生を費やしても読みきれない分量だ。これで、最初の1年は4週間で $2(現在のレートで 210 円)となっていて、正規の料金でも4週間で $8 である。これに対して、毎日新聞だと遡れるのは5年前までだし、月額料金は税別で 980 円だ。朝日新聞は更に貧弱で、1年前までの記事しか遡れず、しかも過去の記事はデータベースとして別料金になっていて、時代別のデータベースを全て合算すると月額料金が 50,000 円を超えてしまう。明治時代の記事は学者や役人しかアクセスしない(でもいい)と思ってるらしい。それから、みなさんが大好きな産経新聞についても調べないと左翼呼ばわりされるので確認してみたが、有料サービスが月額で 550 円という割安な設定になっているのだが、過去の記事を読めるのかどうかは全く分からない。ノリとしては、いま読める新聞の電子版といったところなので、過去の記事のアーカイブという観点はさほど重視していない気がする。

もちろん、NYT が日本についての記事でおかしなことを書いていたという事実はあったし、Half the Sky の著者であるニコラス・クリストフ氏が(妻が中国人だからという揶揄もあるが)それなりにバイアスのかかった記事を書くことでも知られていて、池田信夫くんがしばしば Twitter で The New York Times は Japanophobe だとこき下ろしているのも知っている。ということは、他の外国についても正確なことを伝えていない可能性があるわけだが(特に日本だけバイアスのかかった記事を出す思惑でもない限り)、こういうことは、もともと他の全ての報道機関にも言えることだ。慈善団体のメディアだからといって偏見から逃れられている保証などないし、ましてやイデオロギー・ファーストな零細メディアであればなおさらだろう。よって、別に NYT を購読しているからといって、書かれている内容が動かぬ〈事実〉であり、事の本質を伝える〈真実〉だなどと信奉したりはしない。

ただ、一つのソースとして非常に強力であることは間違いがない。取材報道記事のインタラクティブな表現にしても、閲覧するのに相当なスペックが要求されるという欠点はあるにしても、単純にクリエーティブとしては良くできている。日本の新聞だと、産経から読売から朝日や毎日に至るまで、こういうところに使われるべきお金が軽視されて、代わりに〈芸能人に語らせる〉というくだらないパフォーマンスに使われてしまうのが困ったことである。どの媒体であろうと、結局は芸能と繋がっている利害関係だけで、教養や情報の分配なり共有について下方圧力が強いままだ。これでは、いかに digitalization を経たとしても、DX なんて全く望みようがない。

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