Scribble at 2023-11-22 17:17:23 Last modified: 2023-11-22 17:21:33
この手の話は、そもそも調査する対象が偏っていたりするので、あんまり厳密な調査でもないし、系統的な誤差を排除したからといってア・プリオリな予想ができるものでもないんだよね。あと、他の記事でも見かけたけれど、「『1/2+1/3=2/5』と答える大学生が増加中」なんてのもある(*)。そして、こういう記事が続々と増えてくると、決まって「文系が日本を滅ぼす」的な lightweight fascism を口にするやつが出てくるわけ。その文系とやらの典型とされる哲学の学生として、国公立大学の博士課程で確率論と統計学の概念を研究していた人間から言わせてもらえば、そういうことを口にしてる奴に限って理数系の修士号すらもってなかったりするんだよな。塾の講師とかやりながら、X で「文系がー」とか与太話を繰り広げてるわけだ。
まず、教えてもらわなければ知らないのは当然だ。学校にパソコンや情報の授業が普及しているとは言っても、教えている方の教員が素人に毛が生えた程度の人材であれば(そして彼らの使う教科書を検査しているのが、東大の学卒集団として「掃き溜め官庁」と呼ばれる文科省の役人だ)、知らない人からは教わらないのは当然である。しかも、重要なこととして、いまや若者の多くは家庭でパソコンよりもスマートフォンを使っている時間が圧倒的に長いだろうし、そもそも自宅に自分で使えるパソコンがないという子供も多いと思う。そしてとりわけ、ここ数年はコロナ禍で両親が自宅のパソコンを専有して仕事をしているとあっては、子供がパソコンにアプローチする機会など更になくなる。子供専用のパソコン? このご時世、そんな余裕がある家庭ってなかなかないと思うね。
(*) https://gendai.media/articles/-/109557。ただし、この記事には、どういう調査をした結果として「1/2+1/3=2/5」と答える大学生が「増加中」なのかという根拠は1文字たりとも書かれていない。こんな文章をいけしゃあしゃあと掲載しておいて、数学だの教育だのと語るような手合いが減らないからこそ、日本の数学教育というのはいつまで経っても「数学的センス」などといった超能力や頓知を尊ぶ原始人の宗教みたいなところから抜け出せないのだろう。