Scribble at 2023-03-22 23:37:28 Last modified: 2023-03-23 07:09:10

BOCTOK-3 の剃刀だが、これは暫く置いたままにしたい。研ぐ知識がオンラインにまともなものがないため、色々と既存の書籍を当たってみたり調べ直してから作業しないと、いたずらにブレードを削って減らすだけの愚行となる。オンラインで「剃刀 研ぐ」などと検索しても、はっきり言ってまともな手順を説明しているページがないし、おおよそ8割はただの天然砥石や剃刀の道具自慢にすぎない。英語で検索しても似たようなもんだが、研ぎ師や髭剃りマニアのオンラインでのプレゼンスとはその程度である。これでは新規参入者が増えずにブームも終わるのは当然だろう(*)。

ということで、やはり替刃式の剃刀を使うという前提で、剃刀の持ち方や運行という点に立ち返って調べたり学んだり、それから実際に剃れる状況で色々と検証したり試してみたい。理容師の養成機関でも採用されている公式の教科書を手に入れたし、これに書いてある事項を基準に関連する分野の知見を盛り込んで、替刃式の直刃剃刀を使った wet shaving の(自己流の)体系立った知見を整備したい。

(*) 僕は「traditional wet shaving のブームはとっくに終わってる」という説を主張している。だいたい2005年頃からブームが始まり、『007 スカイフォール』という映画で straight razor が注目されたと言われる(本当かどうかはともかく)2012年頃を挟んで、2020年前後に終息したと見立てているのだ。終息した原因としては、最後の決定打はコロナ禍、つまり外出するために髭を剃るという人が極端に減ったために、商品が売れなくなったり、理容室へ足を運ぶ人が減ったからではないかと思う。でも、髭剃りや剃刀を研ぐ話題などに関連するブログとかサイトとかフォーラムなどの最終投稿日を見ている限りでは、それまでのあいだに2017年頃から続々とサイトの更新が止まっているように見受けるので、もっと別の理由があったのではないか。そして、その一つが上の段落で書いたように、日本だろうと欧米だろうと若い人から見れば「結局は金持ちの道楽かよ」という印象にとどまり、新規参入者が増えなかったことも関連があると思う。

あと、これは YouTube で GORO さんという理容師が髭剃りについて配信している動画でも話していたことなのだが、基本的な知識とか技能について解説している人が非常に少ないし、言及していても些末なことばかりであるか、ほんの一部しか取り上げずに息切れしたりサイトやブログの更新を放置してしまう。つまり、可能な限り exhaustive and foundational に解説しているコンテンツというのが、とりわけ日本には全くない。フェザーや貝印などは髭剃り関連の啓発サイトを公開しているけれど、そうしたメーカーのサイトはカートリッジ式の安全剃刀の購入を促すために制作されているため、traditional wet shaving についてはぜんぜん情報がない。

そして Shaving Library のように充実したコンテンツのサイトにも言えることとして、理容師が養成機関で使う教材を読むとはっきりするのだが、髭剃りというのは髭を剃ることだけで話を終わってはいけないのであって、剃刀だブラシだというデバイスだとか、あるいはブレードを研ぐなんてことは、申し訳ないが「フェイス・ケア」全体の観点から見ればカスみたいなものなのである。そして、フェイス・ケア全体の知識や技能や道具でクライアントに接するサービスだからこそ理容室には価値があるのだという教材の説明は、非常に説得力がある。正直、ケアという観点で言えば、50万円の天然砥石なんてどうだっていいのである。これは、僕らが貧乏だから言ってるわけではなく、そういう砥石を使って剃刀を研ぎたい人は研げばいいし、それにはそれの効用があるのは尊重するけれど、それは髭剃りとは殆ど関係のない話なのだ。極端なことを言えば、髭剃りに関わるスキン・ケア全体の心身にとっての価値を 100% とすると、その中で天然砥石を使って剃刀を研ぐなんてことが影響を与える比率なんて 0.1% もいいところだろうと思う。そして、金持ちやマニアは、その 0.1% のために大枚をはたいていいし、それを無駄だとは言わない。でも、本質でもなんでもないのだ。0.1% は 0% ではない。でも、僕らのようにスキン・ケア全体という観点で健康を維持したり向上させるという人にとっては、やはり気の毒だが「カス」としか言いようがない。

もちろん、天然砥石を使って剃刀を研ぐとスキン・ケアにとっても良い効果がある(肌への当たり方がやさしい)という反論があるのは分かるけれど、それは同じレベルの技能で髭を剃るという前提があったり、同じ質や生え方の髭に対して比較した場合など、色々な条件が必要であって、高額な砥石を使ったスキン・ケアとしての効用が何回分の髭剃りをすれば他の方法と比べて有意に分かるのかは、実際のところ誰も試したり調査したことなんてあるまい。それこそ、伝統的にそう言われているからそう思うだけというプラセボの可能性もあろう。僕は、何らかの効用があるという主張自体は(僕自身も実験などしていないわけだし)無碍に否定しようとは思わないが、現状でマニアが言っていることの多くは「京都で取れた石」だの「伝説の名人に教えてもらった研ぎ」だのというハロー効果による錯覚だと思う。全くの無意味ではないとしても、せいぜい 0.1% くらいの効用しかないと思うね。そして、その 0.1% を積み重ねたところで、君らは僕のルックスには勝てないのだ。

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