2019年03月02日に初出の投稿

Last modified: 2019-03-02

でも豊かさを問い直そうとか言う人が、豊かさを前提としてしかあり得ないようなアイテムや活動にやたらにこだわる、というのはよく見かける現象なのだ。ちなみに、「豊かさを問い直すべきではないか」という人はほぼすべて、他人に上から目線で「べきではないか」と言う自分に酔っているだけで、本当にそれで豊かさをまともに問い直し、そして自分自身が貧乏生活に甘んじようと決意した人なんか誤差範囲でしか存在しない。あるいは、もともと貧乏な人がやっかみで口走ってるだけだ。

キューバの経済 Part2: 経済の「効率性」とは?――物流と『ザ・ゴール』

ふだん、僕はもちろん各所で書いているように、大手ないし中堅広告代理店の案件に従事している。案件の大半は関西資本の企業が発売している商品のランディング・ページだとか、プレゼント等のキャンペーンに関わる特設サイトだとか、コーポレートサイトの改修だ。そして、その多くは、はっきり言えばロクでもないサービスや商品のセールスに手を貸しているのは明白であり、どう考えても栄養価の偏っている食べ物だとか、パブリシティだけで下らないシステムやストーリーのゲームだとか、こんな商品が人類史なり地球上に一つや二つ増えたからといって、いったい何の意味があるのかと思わされるような、それこそ技術者やマーケティング担当者や経営者の自己満足でしかないクズのような新商品の宣伝に関わっている。したがって、こういうものが 100 ほどあれば、それが 50 になったからといって選択の余地が狭まった、キューバのような社会主義だーなどということにはならないかもしれない。

でも、山形さんが指摘するように、それは単なる願望でしかない。たとえば、世の中には「アイスキャンデー」という分類の商品が数多くある(*)。スーパーで見かける『ガリガリ君』ですら何種類もあるので、それこそ業界で合計すれば何百種類とあるに違いないが、その数が半分になったからといって、恐らく種類の数としては誰も減ったことにすら気づかないかもしれない。でも、種類が減った後に、どこの店舗でアイスキャンデーを探しても『ガリガリ君』のシチュー味とか(うげげ・・)、アセロラ味とか(食べたことないけど・・)、ナポリタン味・・・しか置いてなかったらどうだろうか。それでも「無駄な商品を生産しなくて良くなった」と言えるかどうか。僕は、そんなものしか店頭に並ばなくなったら、アイスキャンデーは口にしなくなると思う。

確かにこれは極端な場合であって、自由に開発して発売していたら誰かの役に立つ何かが出てくるかもしれない、それゆえ自由の方が望ましいのだという想定は、無能で、強欲かもしれない起業家や経営者に免罪符を与える、リバタリアンと同じ理屈になってしまっているとも言える。

それに、そもそも日本では山形さんが左翼に突っ込む必要などないのだ。

いったい日本の商売人の誰が「環境資源を必要なだけ有効に活用するように生産計画を立てよう」などと考えるだろうか。近代においては、過剰こそが成長の糧である。そして、可能な限り多くの人々(昨今は「生活者」と呼ばれている、制御しやすいサルのこと)に過剰な欲求を植え付けるのが広告代理店の命題であり、あと 1,000 円だけ足せば「豊かなアーバンライフ」だの「ロハスなおしゃれ生活」だの「クリエーティブなウォーターフロントの暮らし」が待っていると、都内の田舎者たちに無駄金を使わせるのが使命である(大都市圏の人々に無駄金を使わせたら、本当の田舎に住んでる人々も追随してくれる。だって日本人だし、誰しも何らかのコンプレックスをもつ凡人なんだもの)。

あと、僕が山形さんの記事を読んでいて気になるのは、彼はどうして、抑制された生活とか「管理」された生活をしたら人は自動的に貧乏になると思ってるんだろうか。僕はたぶん山形さんの年収の 1/5 くらいの給与だと思うけれど、別に明日の食事に事欠くほど深刻な不自由もなく生活している。そして、この地球から「新書」とか「文庫」と呼ばれる本が 1/100 になっても、僕は日本の大人として何か情報や文化において重大なものが欠落するなんて、思わないな。ああでも、『新教養主義宣言』とかいう本がなくなってしまうと困るかもしれないなぁ・・・

(*) ちなみに日本アイスクリーム協会という団体が、なぜか単なるアンケートのレポートを「白書」と詐称して公表していて、その文書にはアイスクリームが何種類ほど発売されているのか全く書かれていない。また、唯一の業界紙である『アイスクリーム流通新聞』のサイトにも全く書かれておらず(有料のレポートには書いてあるのかもしれないが、この程度の事実を隠す必要がどこにあるのか)、要するに日本で何種類のアイスクリームが発売されているのか、よく分からない。対照的に、業界内での売り上げシェアは、検索すれば簡単に見つかる。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook