2018年12月05日に初出の投稿

Last modified: 2018-12-05

松坂和夫さんの教科書は多くの人々から賞賛されており、NRI, OpenID Foundation の崎村夏彦さんも Google+ かブログで松坂さんについて書いていたのを覚えている。さきほど帰宅する途中でジュンク堂の大阪本店に立ち寄ると、松坂さんの「数学入門シリーズ」(岩波書店)が並んでおり、なんでも新装版だという。手にとってみたが、なるほど後からアマゾンのレビューでも見かけたとおり、あまり印刷の結果は良くない。そもそも岩波書店は岩波文庫の重版にしても殆ど読めないほど擦り切れた版を使うので、ヒュームやロック、あるいは中世哲学の重版などは一部の好事家が闇雲に買うのに任せて、学生さんや初心者には買わないように勧めている教員もいる。僕も、そろそろ一部の岩波文庫の重版は旧字体が使われている点も含めて、奈良国立文化財研究所の古文書解読担当者にでも任せて(笑)、現代的な文章に改めたほうがいいのではないかと思う。もちろん、本当の古文書の原文を改める必要はないし、それは時代錯誤というものだろうが、翻訳の文章は、その文章そのものに古い日本語の文章としての価値があるのでもなければ(そしてそれを主な商品価値として売るのでない限り)、現代の表現に改めるか、それとも絶版にするべきである。いま買っている人々が、古文や旧字体を先に学んでおく理論的・思想的な必然性など学術の観点から言って皆無であるにもかかわらず、ろくに読めもしない本を平気で売るとは何事か。

それから、他にも多くの出版社から「新装版」だの「オンデマンド版」だのと称して、ぶさいくな装丁の本がやたらと発売されるのだが、少しはわれわれのようなプロのデザイナーに仕事を依頼してはどうかという気がする(もちろん華美に装丁をデザインするとは言っていない。理工系出版社の装丁デザインは、逆に素人のくせにやたらと無駄なことをするから困るのだ)。そして、発行部数が少ないせいで値段が異様に高いにもかかわらず、紙の質が非常に悪いものが多いのも困る。文字が薄いのは版が磨り減っているからであり、これに対処しようとすればアマゾンのオンデマンド印刷のように、昔の本の紙面をスキャンしてコピーのように印刷しなおすしかないだろう。それでも読めたらマシだと思うが、安っぽさはどうしようもない。

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