2018年12月04日に初出の投稿

Last modified: 2018-12-04

Messages でも書いたように、いま『オペレーションズ・リサーチ』という学会誌のバックナンバーを眺めていて、目ぼしい論説の PDF を戴いているところだ。こうして眺めていると、学界の動向についてはともかく、その実地における活用という点で深く嘆息する他はない。なんとなれば、簡単に予想もできるし想像もできると思うが、およそ 380 万社と数えられている国内の「企業」にあって、オペレーションズ・リサーチどころか微分方程式を解ける経営者が何人いるだろうかと思わざるをえないからだ。

もちろん企業というものは、経営者が数学を理解しているから成立するわけでもないし、ましてや経営者が数学を理解していようがいまいが、それは企業として儲かることの必要条件ですらない。しかし、現状の経営を以てして「儲かっている」とか「成立している」ことに満足するだけでは、企業の経営者として不十分だと言わざるをえない。ところが、多くの企業の経営者には、たとえ創業者ですら going concern や企業としての成長を真面目に考えている人物が驚くほど少ないことが分かる。それは、「企業としての成長」というものを、M&A による多角化とか従業員数の増加による業容の拡張とか新事業による業態の拡大だと思い込んでいる経営者が多いからなのだろう。企業としての業務効率を引き上げることによって、現従業員の拘束時間を減らしたり、歩留まりの比率を引き上げて収益率を上げるということには考えが及ばないらしい。しかるに、経営の「改革」と称してパワープレイの実績を積み上げる経営者と言えば、簡単に言えばリストラしか能がないのである。そういう人物に数十億もの年棒を許してきた日産の株主や労働組合も大した腑抜けの集団だが、かといって他の多くの企業を見れば、「成長を望まない」というセリフを無為無能の言い訳にしているとしか思えない。

昔なら、殆どの中小零細企業の経営者は農民である。そして、農家というのは決まった耕地で米や野菜を作っていれば「成長しなくても暮らしていける生活」が維持できたのかと言えば、実はそんなことはない。限られた耕地を有効に使えるように、土地が養分を蓄えるだけの余裕を持たせながら利用しなければならないのである。そして、後の世代に資産を渡すに当っても、その経験を正しく伝えられなかった場合は、後の世代が資産を考えなしに使い切ってしまう。これは現代でも世襲制の企業の多くに見られる問題だ。「成長しない」という選択は、無為無策のことではないのである。そして、資本にものを言わせた業容や業種の拡大で一時的な「成長」を目指すというのでないなら、成長しない企業においては社内のさらなる合理化や効率化が図られなくてはならず、既存の商圏や商流にあぐらをかいている事業者は遅かれ早かれ事業継続性が失われる(その最も大きな原因は、取引相手の世代が変わったり死亡するという自然な事情による)。

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