2019年09月26日に初出の投稿

Last modified: 2019-09-26

よく閲覧するメディアで paywall が実装されるのは困るけれど、もちろん収益がないと事業として続けられないのはわかる。そういうわけで、メディアの購読料金を払うにせよ払わないにせよ、いちど整理して考えておくことは望ましいだろう。

まず、たいていの海外のメディアは The Atlantic にしても aeon にしても、おおよそ年間の購読料金は(オンライン版だけを想定して)$50 前後である。つまり 6,000 円弱だから、日本科学哲学会の年会費と同じくらいである。もちろん、たいていの人にとって 6,000 円は即座に出せるような金額ではない。僕は小学生の頃に毎月の小遣いが1万円ていどだったが、それでも『考古学ジャーナル』なんて雑誌は特別号なら 3,000 円くらいしたし、電車通学の小学生は買い食いも生活習慣の一部なので、それなりに交際費としてもお金はかかる。それは勤め人となっても同じようなものだ。自分で稼ぐようになっても、書籍代だと言ってひと月に1万円も本を買うのは、限られた人々だけの話である。実際、読書する時間や予算が減っているなどと言われるが、もともとサラリーマンだろうと自営業だろうと主婦だろうと高齢者だろうと一ヶ月に1冊の本すら読了しない人が大半だし、いまでは 4,000 円前後の月額料金がかかる新聞すら、ロクに読んでない人が大半だろう。朝食が出来上がるまでに新聞を隅々まで読むなんて習慣がある人は、もともと日本の家庭には存在しない(あったとしても、それは食事を用意する女中や専業主婦という奴隷がいた時代の話だろう)。一部の家庭では事実だったとしても、高給取りであれ貧乏人であれ、あるいは社会的な地位がどうであれ、少なくとも現代では、あれは大多数の人にとって全くのフィクションだ。

よって、自分自身の生活実態を基準に考えたら、新聞を購読して1年間に5万円ていどを出費するのは、明らかに浪費である。そして、気の毒なことだが新聞社がなくなっても実は報道する手段などいくらでもある。一つの会社に任せるなんて前提があるからこそ、何々新聞とか何々テレビという事業者が存続しなければいけないという話になりやすいが、なくなったらなくなったで、専門分野ごとに情報を伝える事業者の競争となり、海外の情報を現地の人と協力して取材したり翻訳して日本の利用者に配信する事業者の競争が始まるだけだ。そして、そのこと自体が巨大なマス・メディアよりも悪いという根拠など何もないのである。過渡期において混乱があるのは当然だろうし、その過渡期に予想されるリスクが大きすぎるという理由で既存のメディアを擁護する人はいるのだろうが、いまでもクソみたいな「事実」を訴えるメディアや個人が検索結果にハエと同じくらい出てくるし、それどころか既存のマス・メディアこそがクソであるという重大なリスクを無視してもらっては困る。

仮に、新聞を購読するていどの予算が確保できるのであれば、代わりにオンラインのメディアを10サービスていどは購読できるだろう。恐らく、そちらの方がマシであるが、果たしてそこまでする必要があるだろうか。The Atlantic という一つのメディアの年間購読料金を支払ったとして、毎日のように更新されるオンラインの記事を全て読み通すような人は(どれほど英語に堪能でも)恐らくいまい。なぜなら、そんな時間がまずないからだ。僕が日頃からザッピングにすぎないと言っている自称速読家の人々ですら、10くらいのオンライン・メディアの記事を全て読み通して何かを書いたり発言するなどということは無理だろうし、実際にそんな人は一人もいないのである。

ただ、一日に記事を1本しか読まないとしても、The Atlantic という媒体を支えるために年間 6,000 円を支払うことには意味があると思う。つまりは、記事ごとの値段とかそういう細かい話ではなく、そのメディアがそれだけの金額を支払うに値するかどうかということであり、僕にとっては日本の殆どの新聞社やテレビ局はお金を支払うに値しないというだけのことである。もっとも、民放のテレビ局に購読料金はないが、それでも僕は民放の番組を殆ど一週間に3時間くらいしか観ていない。しかも、それは実家で父親と過ごしているあいだに父親が観ている番組を一緒に眺めているだけのことである。NHK の受信料はテレビがあれば払わなくてはいけないし、実際に朝のニューズ番組は時計としても使っているし、朝ドラを観るのは『ひまわり』の頃から習慣の一つでもあり、最近では仕事の関係もあるから観ている。よって、受信料は支払っているが、必要以上に観ようとも思わない。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook