2018年12月17日に初出の投稿

Last modified: 2018-12-17

いま、日本の書籍返品率は30%台後半で推移している。返品率がこれほど高水準にあるのは、多くの出版物を書店の注文に基づかずに送る「配本制度」があるからだ。この仕組みを根本的に見直し、返品率を大幅に引き下げることができれば、日本でも人々を引きつける魅力を備えた書店なら、まだまだ開店・営業していくことが可能になる。

日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由

何日か前に書いた内容と同じく、要するに日本人というのは右だろうと左だろうと配本制度のような統制経済にもうかがえる社会主義が大好きだ。そして、現今のカウンターとしてブログや論壇で威勢がいいのは、それらを両方とも否定するリバタリアンなのだが、社会科学の素養があれば既にご承知のとおり、こういう構図は既に50年前のものである。橘なにがしとか、江戸時代の貨幣を Twitter のアイコンにしているブロガーとか、あるいは池田信夫君のようなリバタリアンが、(金持ちや権力者にとっての)効率や自由を叫ぶだけの「スネ夫君」にすぎず、実際には莫大な格差と階級制度によって最も彼らの身上が首尾よく実現されることを理解しない、いわば「自由を騙る専制主義」の走狗であることは常識の範疇に入る。書籍販売のような話題についても、こういうリバタリアンは卸や配本制度を反動的な制度だと言って反対するが、そのタイミングを見ると、こういう人々はアマゾンのような巨大資本が登場した後に、これらの企業が一斉に世界中のあちらこちらで事業展開できることこそ「効率的」で「自由な経済」なのだと主張する。要するに、巨大企業が事業展開するための露払いをしているだけなのであり、彼らの言っていることは経済理論でも社会科学の学説でもなんでもないのだ。

もちろん、従来の出版取次制度には欠点がある。その一つは、取次そのものの機能が配本や返品管理や出版社との取引という効率化であるため、出版社も書店も取次の寡占化を求める一方で、寡占化によって取次が出版物の取引条件や流通を、つまりは国内の情報流通そのものを実質的に支配してしまうという点が指摘されてきた。売れると見込まれた本なら何でも配本されるので、ヘイト本による名誉棄損やコピペ歴史書のような著作権法違反が分かり切っているような本でも全国へ一斉にばら撒かれ、そのリスクを取次は負わない。ちょうど、人種差別が分かり切っているコマーシャルを平気で制作・放送しても、広告代理店のディレクターは非難されず、クライアント企業だけが炎上するようなものだ。こういう、あからさまな商業主義や倫理観の欠如が業界全体に横行することになる。

もちろん、理屈としては、こういう業界が自助努力を怠れば衰退するのは当然であり、自業自得とも言える。しかし、出版物を託している出版社や知識・情報を得ている消費者も、一緒に被害の一部を負う。単にロクでもない企業が一つだけ倒産するというのであれば、リバタリアンであろうとなかろうと「知ったことか」で済ませられるが、出版業界の全体がいちどに衰退するのは、印刷業界や流通業界など影響が大きい。

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