2018年09月07日に初出の投稿

Last modified: 2018-09-07

ChatWork や Slack を始めとするメッセージング・サービスを業務で使うようになってきて、一部ではメッセージの返事を省こうと声を上げる人がいた。「いた」と過去形で書いているのは、もちろん、もうそんなことを声高に言う人など殆どいないからだ。

その理由の第一はこうだ。なるほど、形骸化していて無意味な返事は、もとから不要だ。たとえば役員や上長が会社や部門の全員を相手に何かを通達した場合に、「@社長 承知いたしました!」などと返事を書くのはバカであるか、野心がある人間だけである(つまり、わざわざ上司の通達に返事するなどという「野心があるかのように見え透いたことをやってまで、率先して何かをやろうとする気概を見てくれよ!」というメタレベルの野心というわけだ)。しかし、そういう無駄な返事をする必要がないからといって、およそ全てのメッセージに返事する必要がないなどという、どう考えても常識に反する発想を逆に「効率」とか「生産性」において励行しようとすること自体が、多くの人にとっては、まずもって人として強い違和感を覚えるものだからだ。「@同僚 明日は会議があるので10時に会議室へ集まってください」と書かれて何も返事しないなんて人間は、やはり効率だの生産性だのと言う以前に社会人としての見識を問われるのが当たり前なのである。それがどれほど億劫でも、それだけで無意味だと決めつけることはできない。

第二に、返事を書くことによる「効率」なり「生産性」の低下など、本当にあるのかという話もできる。僕のように凡人の3倍や5倍の生産性でアプリケーション開発や仕様書の作成や社内規程の起案やページデザインができるならともかく、たかだか凡人がメッセージの返事を省いたくらいで何の業績が上がるというのか。試しに、Slack でもなんでもいいが、「了解しました」「承知しました」「わかりました」という返事を一日に何度だけ返信しなくていけない機会があり、それを省くことによって確保できるのが一日で何分になり、それをプログラミングやデザインやイカサマ企画書や裏帳簿の作成に使えば、いったい何行分のプログラム、幾つのアイコン、何ページのパワポシート、そして何桁の嘘っぱち財務諸表になるのか。恐らく小学生でもできる足し算や引き算で十分な結論が出ると思うので、夏休みの自由研究には間に合わなかったかもしれないが、返事など不要だと息巻いていた良い子の諸君は、ぜひ取り組んでもらいたい。

そして第三に、返事をしたくないと言っている連中の大多数は、実は返事を書くことそのものではなく、そもそもメッセージング・サービスを何度も見たり上長の発言をフォローするのが面倒臭いだけのことなのだ。要するにコミュニケーションを拒否したり無視する口実として、形骸化した返事という些細な害を持ち出しているにすぎず、簡単に言えば社会人、なかんずくサラリーマンとしての無能どもが文句を言っていただけのことだったのである。試しに、誰の通知や連絡にも全く返事をしない「からこそ」上場できた会社とか、社員がお互いに全く返事を書かない「からこそ」大きな売り上げを達成した会社が一つでもあれば、企業の役職者をやっている僕にぜひともマネジメントの要点をご高説賜りたいくらいである。

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