2018年07月13日に初出の投稿

Last modified: 2018-07-14

土壌とか土木工学の科学哲学という風変わりな分野を研究してみたいと思っている。そして他にも、栄養学は科学哲学としては非常にチャレンジングで、まだ殆ど業績がないという無様な状況を何とかしたいとも思っている。その理由は簡単で、現在の栄養学は疑似科学や統計的誤謬の宝庫だからだ。僕がいまからでも大学教授を代わりにやってやってもいいくらいの無能が大学にひしめいており、まったくもって公衆衛生にかかわる騒乱罪と言ってもいいほどの悪質な本を書いている連中がたくさんいる。

たとえば、今日もジュンク堂で色々な新刊書を見ているとき、『食のパラドックス 6週間で体がよみがえる食事法』(スティーブン・R・ ガンドリー、翔泳社)という新刊があった。翔泳社は経営学の本にしても、ときどきこういうものを混ぜてくる。簡単に言えばレクチンが多くの病気の元になっていて、しばしば「癌のメカニズムは植物から進化したときに一緒に持ち込まれた」などと言う人がいるのも、ほぼ同じことを言わんとしているのだろう。レクチンを多く含んでいるから食べるべきではない食物として、豆類全て、全粒粉のパンや蕎麦など茶色の食べ物、トマト、キュウリ、ナス、ナッツや種、そしてジャガイモが危険だとされている。

もちろん、まともな生化学や生物学や栄養学を学んだ人にとって、病気というものがたった一つの原因で起きるなどという理屈が殆ど幼稚園児のレベルであることは自明だろう。これまで、そういう「病気の元凶」として数多くの食物や物質が紹介されており、それらを全て加味すると、われわれは殆ど食生活できなくなってしまう。リスクが全くないと言い得る食物など一つもないからだ。

ともあれ、専門分野の素養や公正な観点をもっていない素人がオンラインで検索してものごとを判断するのは非常に危険である。栄養学は医療にかかわるので、代替医療の自称専門家やイカサマ医者(栄養学や医療関連の疑似科学に対抗するのが難しいのは、本物の医学博士や医者がたくさん関与しているからだ。逆に言えば、大病院の外科部長やあなたが家族ぐるみで長年にわたって世話になっているホームドクターでもキチガイの可能性はあるのだ)が色々なウェブページや、それらしい医療・福祉・社会保障・食生活・介護関連のサイトを作っている。子供のために安全な食材を使いたいと思っている人は多いだろうし、たいていの親は子供のことになると冷静な判断力を失って社会規範を逸脱するものなので(親としてだけでなく、たいていの人間は倫理的にも凡庸な人間なので、それはそれで仕方のないことだ)、「お子さんのために」とか「こどものいのち」などと平仮名で書かれているだけで(笑)、なにか重大なことが書かれてあるかのように思い込んでしまう。しかし、いちいちオンラインに公表されている大量のページからクズとまともなページを選り分けるのは、はっきり言って時間の無駄である。話題や分野によっては、まともなリソースが公表されていて、しかも検索エンジンの上位にヒットする確率が高い場合もあるが、実は僕らが素人なりに関心をもつような話題とか分野は、それこそニーズが高いためにクズどもが集まってきやすいので、クズの確率は高くなるのが実情だ。場合によっては、ほぼ全てのサイトが WELQ レベル(上智や慶応といった三流大学のバイト学生が書いたコタツ記事)だと断定した方が安全だと言える。

では、医学書院や中央法規出版から出ている本を読めばそれで済むかと言うと、済む可能性もあるが、恐らく専門書は素人には難しすぎる(医療系専門書の出版社は、残念ながら通俗書を出していない)。ということは、医者や医療団体や管理栄養士の団体や製薬会社、そして厚生労働省や消費者団体が正式にステートメントを出さない限り、ジャガイモを食べたら癌になるといったふざけた「自称学説(専門雑誌に論文を書いたくらいで「学説」になると思ったら大間違いだ)」など無視して、古来から続くバランスの取れた食事を心がけたり、十分な睡眠と運動を心がけて、クソみたいな残業をせず、クソみたいな連中にストレスを感じないよう、他人の腹が立つふるまいは「ヒトに似た人形がランダムに手足を動かしたり音声を発しているだけだ」と切り捨てることだ。古来から言うように、過ぎたるは及ばざるがごとしである。パラノイアに食材を選んだとて、多くの人は食材以外の色々な理由で癌になったり別の疾患にかかりうるし、場合によってはそのパラノイア気質ゆえに周辺の人間から反感を買って、病気で死ななくても単に殺される可能性もある。

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