2018年02月19日に初出の投稿

Last modified: 2018-02-19

某案件で、新しい広告商品ごとに予約フォームをつけた LP を制作して納品していたのだけれど、広告代理店案件なので費用はかなりかかる。なので、クライアントとしては費用を抑えたいから LP を必要とするたびに作るよりも CMS を導入したいという要望が出てくるのは当然だろうとは思う。とは言っても、LP を1ページずつデザインしてコーディングしても、街中のホームページ屋さんが受注するような金額と大して変わらなくなってきているのも事実で、デザイン費用を入れても二桁後半に届かなくなっている。

これで、最低でもディレクター、デザイナー、コーダ、プログラマ、そしてバックオフィスの人員の工数がかかるので、原価はパソコンとかの償却費用に事務所の家賃といった固定費、そして借入金などの全体配賦の費用を割り当ててから、最低でも売上額の 15% ていどは経常利益として残るのが理想とされているから(特損とかはとりあえず省く)、仮に売上が 30 万円だとするとどうなるか。個人事業主が受ける場合はこれでも非常に高い(ふつう中小零細企業や個人商店が LP の制作に 30 万円なんて出さないし出せないだろう)が、たとえ固定費や経常利益を殆どゼロとして計算しても、当社の人員を5人使い、平均した人件費が一人当たり一ヶ月で 50 万円(もちろん、これは会社が収める分の保険料などが加算された金額であり、もちろん各人の手取りはもっと少ない)だとすると、彼らが一ヶ月で平均して 176 時間くらい働くとして(8時間 x 22日)、5 名で 880 時間となるから、人件費の総額である 250 万円を 880 時間で割って、1時間あたりの人件費は 2,840 円ていどとなる。こうして、30 万円の売り上げの案件を完全に内製だけでやる場合、利益が全く残らないでいいという前提で計算しても、30 万円を 2,840 円で割ると、その会社は従業員の工数をせいぜい 100 時間くらいしか使えないということになる。

しかし 30 万円の案件であろうと、ディレクターがクライアントと打ち合わせたり企画書を書いている工数だけで、100 時間ていどは使い切ってしまうのがウェブ制作という仕事の現実である。したがって、経常利益が残せなかろうと人件費や固定費だけでも帳尻を合わせるには、原価はどうしようもないし人件費を下げるわけにもいかない場合、調整可能なパラメータは1ヶ月あたりの就業時間の長さしかないのである。もちろんファイナンス、つまり間接金融などで不足を補完することはできるが、常に補完していては返済額が大きくなるばかりで先が見えない。

ウェブコンテンツの制作事業というものは、当初からデザイン事務所やイベント会社のような広告代理店の下請けという位置づけから出発した会社が大半を占めていたため、同じように少人数でも希少で高度なサービスを提供するコンサルティング会社とは違って、クライアントコントロールが不可能な力関係に置かれたまま 20 年ほど経過してしまっている。ご承知のように、僕は10年ほど前に「ウェブ業界はどこを向いているのか」という記事を書いていたのだが、ウェブ制作プロダクションの経営者というものは、昔も今も徹底的に財務会計やサービス設計・ビジネスモデル設計(プログラミングやデザインではなくクライアントとの関係をうまくつくるということ)がうまくいかないようである。業界内での情報交換が乏しいというのも一つの理由だと思うが(正直、ウェブ制作プロダクションの経営者はなんとか協会などをでっち上げて小手先テクニックのセミナーや資格商売を始めるよりも先に、やるべきことがあったはずだ)、そもそも経営について何も学んでおらず、ウェブ制作プロダクションや IT ベンチャーの経営者が読んでいるのは、オライリーや翔泳社などから出ている自己啓発本や、日本での実務に殆ど関係のないプロパガンダの本ばかりだと思う。はっきり言って、IT に関わっていようといなかろうと、経営者というものは日経 BP や PHP などから出ている松下幸之助や論語の本など読んでいる暇があったら会社法や商法のテキストを開くべきなのである。

さて、実はこんなことを書こうとしていたのではなかった(笑)。冒頭で書いたように、LP を一つずつ制作するのは費用も工数もかかるので CMS を導入したいという話がクライアントから出たらしく、もう昨今では「CMS」と言えば殆ど WordPress のことなので、ローカルにて与件と仕様を満たすような設定や運用が可能かどうか試験していたところだ。とは言え、僕も既に WordPress を使い始めてから 15 年くらいになるし、WP の仕様として用意されていない機能を functions.php に追加したり、あるいは自力で PHP のプログラミングで解決できるかどうかくらいの見込みはつけられるから、ローカル環境で与件が満たせるかどうか試すとは言っても、そんなことに費やす時間はせいぜい数十分といったところだ。たとえば、クライアントのご担当者は、簡単にフォームを含めた LP の文言を編集したいという要望をもっているので、フォームは定番の Contact Form 7 を使い、商用なので確認画面は Contact Form 7 add confirm を追加している。このフォームは、LP ではそのまま表示することが多いのだが、商品の予約が多すぎる場合はフォームだけ非表示にしたいというのが与件である。したがって、WordPress の管理画面上での仕様なら「Contact Form 7 のショートコードを書いたり消したりする」という対応で済ませるか、あるいはカスタムフィールドを用意してラジオボタンを提供するかのどちらかになるだろう。前者なら、管理画面の使い方を文書で渡して実務を説明すればいいだけだが、後者なら、Advanced Custom Fields のようなプラグインを追加して、記事や固定ページの編集画面にフォームの表示ステータスを切り替えるラジオボタンを追加することになる。そして、ショートコードは条件分岐に対応していないから、いちばん簡単な表示の切り替えは、カスタムフィールドで表示ステータスを取得したら、その値に応じてスタイルシートの出力を切り替え、フォームの DOM 要素全体を "display: none !important" で見た目を非表示にしてしまえばいいだろう。もちろん、カスタムフィールドの値に応じてショートコードを実行するかどうかを切り替えられたらいいが、なるべく functions.php は使いたくない。なぜなら、カスタムフィールドの値("yes" や "no")によって echo do_shortcode( '[contact-form-7 id="4" title="form_01"]' ); などとショートコードを動的に実行するかどうか判定する場合、当然だが「どのショートコードを実行するのか」を指定するような仕組みが管理画面に用意されていなければ、実行するショートコード、つまり表示されるフォームのフォーマットは固定されてしまうからだ。かといって、実行したいショートコードのパラメータをクライアントの担当者に指定していただくという手間を求めると、運用が面倒になるのは明らかだからだ。

とりあえず、社内にこのていどのレベルの会話が通じる相手が二人くらいしかいないのは辛い(笑)。

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