2019年01月29日に初出の投稿

Last modified: 2019-01-29

一夜明けてメディアのコピペ・バカ騒ぎは終息したようだから、あらためて天牛堺書店さん(船場店)について書いておく。いま「天牛堺書店」で Google 検索してみたのだが、今回の破産にかかわる記事はたくさん見つかるものの、相変わらず何のつもりなのか、1ページ目は「About 576,000 results (0.57 seconds)」として結果を表示したあと、2ページ目では「Page 2 of about 59 results (0.51 seconds)」などと、いきなり結果を絞ってくる。これでは話にならないので、Bing で検索しなおしてみたのだが、やはり記事の影響があって「電子書籍に負けた」という下らない感想を書いている子供が多い。たとえば、これだ。

「天牛堺書店 破産の負債額18億円がやばい.....電子書籍強すぎ!!」(https://kininaru-saishin-news.com/archives/14618)

この人物が書いているのは、要するに「俺は電子書籍を読むから古本屋なんてもういらねーよ」というだけの本人の感想にすぎない。それを出版や古書店の経営の話と混同しているわけで、典型的な「セカイ系評論」である。おまえの読書生活なんか知ったことかという話でしかない感想を古書店業界の話にすり替えているという自覚すらない。

次に、こういう素人評論もある。

「天牛堺書店が倒産した原因」(https://www.management-consultant.info/?p=2165)

「原因」として四つ挙がっているものの、どれもデタラメな話である。もちろん天牛堺書店はいくつかのオンラインサービスを利用していて、ウェブでの販路もあった。販路にオンラインサービスも加わったというていどのことで書店が倒産するくらいなら、とっくに日本の書店は消滅しているはずだ。次に、電子書籍が普及したというマクロな話を書いているが、いっとき何かと言えば「リーマンショックで」とか書いていた馬鹿と似たような知性の持ち主なのだろう。そして、若者が本を読まなくなったとだけ書いているが、天牛堺書店さんが破産した原因の話はどこへいったのだろう。日経か東洋経済のサイトでいっぱしのエコノミスト面した評論でも書いているつもりなのだろうが、全く何の根拠もない。そして最後に不採算の店舗を閉鎖したら正味の売り上げが下がったので融資を受けづらくなったというコピペだ。そして、あろうことか融資の話をこんな風に説明している。

「新店舗を作って売り上げの見込みが立つから / 銀行はお金を貸してくれるわけですから。」

この、芸能人のブログによくある奇怪な改行ルールは、詩でも書いているつもりなのだろうか。いっとき、携帯で書いているからだと言われたこともあるが、僕はそうは思わない。なぜなら、一定の文字数で改行しないと読みづらいなどということは、携帯などなかった時代でもメールの書き方として盛んに言われていたからだ。要するに、本人が携帯でしかウェブにアクセスしていないということなのだろうが、井の中のなんとやらの典型と言っていい。

しかし問題はそんなことではなく、銀行が「売上」という指標で融資すると思っている無知無教養だ。恐らく会社を経営するどころか経営指標を眺める役職にすら就いたことがない、学生か主婦が書いているのだろう。簡単に言うと、間接金融機関が新規融資してくれたりロールオーバーさせてくれるのは、見た目の「売上」などという指標を見ているからではない。或る企業が事業所や店舗を新しくつくれるということは、その企業の自己資本比率が高くて経営が安定しているか、もしくは他の金融機関が融資できると判断したということだ。売上という数字は、そうした見通しの結果として期待される指標であって、実際に売り上げがどのていど上がるかなど誰にも分からないのである。仮に売り上げが予想の半分であっても、自己資本比率の高い会社であれば借入金を返済する余裕があるので、金融機関は貸せると判断するだけのことである。

あと、こういう素人がたいてい陥るのは、過去に出版された書籍がなんでもオンラインで販売されているという思い込みだ。このような人々は、いっときは「デジタルネイティブ」と呼ばれて、あたかも SF 的なニュータイプのように持て囃されたものだったが、その実態はオンライン・サービスのビジネスモデルの部品というだけのことだった。ちょうど、広告代理店の手のひらで踊っている連中を「生活者」などと呼ぶのと同じことだ。そして、こういう人々は、オンライン・サービスを利用して読めるのはオンライン・サービスで売っている本だけなのだという単純な真理に気づかない。この人物は、なにやら中小企業診断士の試験や資格にかかわるアフィリエイトをやっているようだが、この程度の財務の知識では中小企業診断士になどなれないし、なれたとしても、大多数の企業でこんな資格が何の手当てにも昇格条件にもならないのは、要するに資格保有者の大半がしょせんは企業経営のペーパードライバーだからなのだろう。

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