2019年07月03日に初出の投稿

Last modified: 2019-07-11

Get insight on emerging technology, innovation, and why it matters to you and your world

Stay Ahead. Stay Connected. Subscribe Today.

MIT Technology Review は日本語版もあって、そちらは電子書籍とセットで年間の購読料が 15,000 円弱となっている。それに比べて本家の年間購読料は、オンライン記事を全て読めるのはもちろん、19世紀にすら遡る PDF アーカイブへのアクセス権(日本語版で「全ニュースアーカイブを利用できます」と書かれていても、本家のアーカイブではないだろうから、しょせんは3年分の記事が読めるだけだ)と紙媒体の雑誌本体(もちろん送料も)を含めても $79.95 弱、9,000 円弱である。しかも、日本語版は基本的に本家の翻訳であり、同時に記事がリリースされるということはないから、一定の日数は遅れる。 それに、日本語版は gengoo とかいうクラウド・ソーシングの翻訳サービスを使っていて、品質の保証をどうしているのか分からない。アインシュタインの伝記を始めとする幾つかの目立つ事例で機械翻訳やクラウド・ソーシングの問題は指摘されているが、実際には問題が小さく分散しただけであって、総体としてクラウド・ソーシングに品質を担保する根拠があるのかどうかは分からない。「Facebook で使われています」なんて、実は何の保証にもならないのだ。なぜなら、Facebook が何も検査していなければ、無保証なのと同じだからだ。また、「問題があればフィードバックしてください」というのも、杜撰な商品やサービスを先に渡しておいてからサポートすればいいという、10年ほど前に流行した「ベータ戦略」や "launch first" ポリシーだが、既にそんなものは化けの皮が剥がれており、実質的には市場や株価の操作が本当の目的だとバレているのだ。 そもそも、この媒体を難なく読める知識がある人で英語ができないという人の方が少ないだろうから、普通に考えたら本家で年間購読した方が良い。英語で読めるというのは、現実にこういう具体的なお金の節約にもなるのである。 では、こういう媒体を購読するということ自体について考えてみよう。新聞を購読している人は多い。NHK の受信料は、猫も杓子も払わなくてはいけないらしいので、払っている人は数だけは多い。他にコンテンツを《購読》している事例と言えば、何も昨今のバカみたいな流行語(「サブスク」)に該当しなくても、既に多くの家庭では WOWOW とか Netflix とか Hulu とかに入って、スポーツから海外ドラマまで色々と観ている人はいるだろう。文字情報のコンテンツに絞ると、確かに英字新聞を購読している人や、英語の勉強として Time とか Newsweek を購読している人はいる。別に会社へ持ち込んだり、購読していることをわざわざ他人に話すとは限らないから、周りで見かけないというだけでいないとは言えない。あるいは、少なくとも博士課程まで進んだ人なら何らかの学術団体に加入したまま、そこから発行される定期刊行物を購読している状態の人(つまり学会の活動とは迂遠でも雑誌は見ているという人)はいるだろうし、他にも何かの宗教団体だとか社会活動の団体に属している人なら色々なパンフレットや冊子を送ってもらっているだろう。 しかし、そういうことに使えるお金という点から逆に考えると、一人が幾つもの雑誌を年間購読したり、幾つもの団体に会費を払えるわけではないだろうと推定はできる。勤め人が一ヶ月に使える「お小遣い」の平均額は、新生銀行が調べた 2018 年の調査だと 3.6 万円だという(ちなみに新生銀行の調査は、サラ金のライクがやっていた調査から引き継いで30年以上の実績があるため、こういうデータを調べるときの基本的なソースの一つにしてよいと思う。まちがっても、素人のコタツ記事や「独自調査」など、どれほど数字が近くても参考にしてはいけない)。そして、その使い道の大半は昼食代と交際費(要するに多くの人は飲み代)であって、飲み食いに大半の小遣いが消えていく。なぜなら、昼食代は平均して 600 円弱というから、一ヶ月の出勤日数を22日として 13,200 円が昼食代に使われることになり、飲み代としては平均して 12,000 円ていどを使うらしいので、合計すると 25,000 円ていどは飲み食いに使われることとなる。これに加えて、他の使い道を尋ねた結果では、電話代、ガソリン代、雑誌・書籍代なども捻出していて、年間購読料をいっぺんに1万円も払える人はそう多くないだろうと予想できる。せいぜい、数か月分の小遣いから少しずつ貯めて払うか、割高になるが月額で購読料を払っているかのどちらかだ。しかも、そういう払い方をしたとしても、年間で1万円前後の支出をする購読料金や年会費を、あれこれとたくさん契約するわけにはいかないということも想像できる。 雑誌の年間購読というのは、普及しているようでいてしていない。こういう契約で、新聞ならともかく雑誌を購読している人というのは、昔から何か特別なジャンルの雑誌を好きで読んでいる「ファン」だった。たとえば無線ラジオの雑誌とか、Time でもそうだが、何か趣味的なものとして雑誌を購読している人々であり、いわゆるメディアを情報媒体として年間で購読するというのは、いまでも昔も一定のハードルがあると思う。しかも、メディアに関しては無料で読めるサイトも多いので、わざわざ1万円前後を捻出するだけに値する媒体を、自分がそもそも活用するどころか熱心に読めるのかという時間の問題も大きいだろう。せっかくお金を払って契約したのだから、せっせと読みたいとは思うが、そんな余裕はさほどないというのも多くの人にとっては実情だろう。したがって、これまで何かステータス・アイテムのように購読されていただけの新聞を購読する人が減っているのも、当然と言えば当然だ。既に新聞など家庭のステータス・アイテムではないし、年間で言えば 40,000 円近い出費をするほどの価値があるのかと言われれば、内容はともかく利用している実情から考えると、価値があると分かっても活用できていないし必要ないと思う人が増えて購読する人が減っていくというのは分かる。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook