2018年12月24日に初出の投稿

Last modified: 2018-12-24

大阪メトロは20日、御堂筋線と中央線の計15駅を、2024年度までに順次、大改装する計画も発表した。300億円を投じ、各駅を地域の特色に合うイメージにつくり変える。

御堂筋線などの15駅、「個性的なデザイン」に大改装へ

地下鉄構内の内装を変えるという話だけど、デザインのプロとして言わせてもらえば、この内装イラストは専門学校の学生に描かせたのか、それとも維新の会(Osaka Metro は大阪市が株主である)や広告代理店と親しいというだけの無能が発案してイラストレータに描かせたのだろうか。公共交通機関の構内という与件を殆ど無視しているものも幾つかあるし、こんなものを「クリエーティブ」だと思って発案した無能がデザイナーを名乗っているなら、天下国家のために是非とも廃業していただきたい。

まず、淀屋橋の内装はレトロなランプを天井から吊るすという。これが、これから近海で大地震が予想されている都市の内装デザインなんだろうか。森ノ宮(ちなみに町名で「森之宮」と表記する場所もある)も何か吊るしているが、まったくもって場末の商店街の発想だ。バカなんじゃないか?

そして、記事の冒頭に出ている心斎橋の内装は、これで「ファッションの発信地として、織物に包まれている雰囲気」を出すというのだから驚きだ。いまどき、こんな古臭くてダサいテキスタイルなど、船場センタービルや丼池筋でもお目にかかれないだろう。この企画には、吉本興業でも絡んでるのか? ギャグとしか思えない。

他にも色々と言えることはあるが、基本的に大阪の歴史や文化についての学識がまるでない、それこそ大阪の大学に入ってそのまま大阪の会社へ就職したていどのことで大阪を知ってると思い込んでいる地方出身者の、地元テレビの番組に刷り込まれた偏見でしか大阪を見ていない様子がありありと分かる。東京にも言えることだが、大阪でも大阪で何代も暮らしてきている人々なんて1%もいないわけで、そういう人々こそ自分たちが地元のことしか知らないという自覚がよく出来ているため、船場で生まれ育った人間が迂闊に千里や河内や摂津や泉南地域のことなんて言わないし、それどころか同じ大阪市内でも離れた地域のことなんて簡単に「こんなところ」だなんて言わない(もちろん他にも、地域によっては色々と事情があるのは分かっているからだ)。

谷町四丁目の構内を金ぴかにするなんて発想が、地元の人間にとって何かの役に立つなんてことはありえないし、ましてや観光客にとっても殆ど意味を為していないと思う。もともと観光客にとって、それぞれの「駅」と周囲のランドマークを結びつける必要などないからだ。観光客にとって必要なのは、あくまでも理解しやすい掲示板やピクトグラムや地図である。

なお、補足として「間違った批判の仕方」かもしれない事例を幾つかご紹介する。最初はこれだ。

「僕たちを消さないで…!駅のホームに描かれた動物たちが可愛すぎる」

https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/midousuji-art

こういう感傷的で情緒に訴えるだけの文章では、単なる好き嫌いの話に回収され、結局は消費されて終わってしまう。これはオルタナティブなり批評としては悪手の類だろう。

そして岸君が発起して拡散している以下のキャンペーンも、彼独特のセンチメンタリズムとして想定内ではあるが(笑)、やはり的外れだ。

「歴史ある大阪の地下鉄を未来に残してください!」

https://www.change.org/p/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AD-%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%82%E3%82%8B%E5%A4%A7%E9%98%AA%E3%81%AE%E5%9C%B0%E4%B8%8B%E9%89%84%E3%82%92%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%81%AB%E6%AE%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84

「私たちが慣れ親しんだ、あのレトロな、かわいらしい、落ち着きのある大阪の地下鉄の駅」というノスタルジーを刺激して、先に紹介したスタンスよりも幅広い人々の共感を得ることは間違いない。少なくとも公共交通機関や公共施設の内装は、利用者が混乱したり気分を害さないようなデザインが求められる。そして、昨今の観光客増加によって外国語の表記は増えつつあるが、構内地図は不足している。内装としてはそういうことに予算を割くべきであって、ああした醜悪なデザインにわざわざ予算を使って作り変えるのは愚かの一言でしかない。

だが、慣れ親しんでいようとかわいらしかろうと、老朽化したり汚れている内装にはきちんと手を加えなくてはいけない。そして、更に良いプランがあれば変更してもいいのだ。内装そのものに歴史的な価値があるというなら、それはそれで保存の仕方はいくらでもあるし、それもできるのが先進国というものであろう。考古学者を志望していたこともある人間から言っても、文化財なんていくらでもそのまま保存できるものではないのだ。すると、敢えて内装を変えたほうがいいのかどうかを検討することに予算を投じるのも一つのアイデアなのであるから、いきなり(僕はプロのデザイナーなので、どうしてもこれがプロの仕事だとは思えない。イラストはプロの仕事かもしれないが、発案は大阪メトロの人間ではないか)しょーもない内装を発案させるよりも、現状の問題点や課題を洗い出して、それを内装によって解決するのかどうかというところから初めてはどうだろうか。これは、企業の役職者として「駅」という事業施設をプランニングするためのマーケティングという観点からも、恐らくは企業経営の素人ばかりが集まって間もない大阪メトロにおすすめする。

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