『漢字伝来』

2010-01-09 02:00 / books and reviews

大島正二/著、岩波新書、2006

Book Cover from Amazon

淡々とした語り口の一冊であった。総じての印象では、一本のやや長い論文を読み終えたような感じがした。それだけ論旨がクリアだったのだろう。

正直なところ古代の日本語と中国語の文字・発音の対応関係を説明した箇所は、あまり記憶にない。ただ、古代の日本人が中国や朝鮮から伝えられた漢字を、自分たちの「ことば」を書き表すものとして運用したり、あるいは「ことば」だけでは分からない自分たちの「概念」の違い(同音異訓)を漢字で表記し分けたりして、だんだん漢字という表記の運用と、自分たちの「ことば」の運用を同調させていった経緯がよく分かった。いま誰でも使う「はひふへほ(ha, hi, hu, he, ho)」の発音が、たかだか江戸時代以降の新しい発音であったらしいというのも、勉強になった。

文字を「自分たちの発音を書き留める記号」でしかないという着想に立てば、確かに片仮名や平仮名は万葉仮名の略記体という意味しかなかったろう。また、文字が音声に従属するものでしかなかったならば、どうして中国の歴代古代王朝や周辺の民族は、自分たちの固有の言語を表すために漢字を無理に使ったり漢字に似せた文字を作ったのだろうか。逆に朝鮮でハングルが採用され、漢字の利用が廃れているのは、漢字に朝鮮語を書き表す力がなかったからなのか。それとも、文字には「音声を書き留める」以上の意味があって、漢字よりもハングルが相応しいと考えられたからなのか。色々考えさせられた一冊ではあった。

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KAWAMOTO Takayuki

Mr. KAWAMOTO Takayuki
also known as philsci
(birth day: Sep 20 1968)
live in Osaka city, Osaka, Japan.

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