最終更新日: 2008年07月20日

ウェブ業界の肩書きあれこれ

2008年05月19日 01:08

「コーダー」さんや「ディレクター」あるいは「ディベロッパー」など、それぞれ企業によって工夫されていますね。兼務も多いので実態とは噛み合わなかったりしますが、参考までに調べてみました。

参考に僕の勤める会社で使っている名刺の肩書きをご紹介すると、氏名の下に「部門」「職位」「職種」の順番で表記しています。役員は単純に(使い勝手がいいように)「取締役」とだけ書いてある場合もあります。僕の場合は部門が「管理本部 情報セキュリティ事務局」となり、職位はなし(ヒラだから当たり前)、職種もなしにしてあります。

まず部門・職位・職種のうち、部門はそれぞれ会社によって大きく呼称が異なります。例えば、ビジネスアーキテクツさんはグループ制になっていて、直接生産業務に関する部門は「アートディレクショングループ」「デザイングループ」「情報設計グループ」「マークアップ&コーディンググループ」「システムソリューショングループ」となっており、キノトロープさんはカンパニー制で事業部ごとに会社を分けていますね。マザーさんはプロジェクトマネージャーやコンテンツディレクターの下にアートディレクターとかチーフデザイナーがいて、HTMLコーダーとか Flasher がいます。ノイさんだとアートディレクターがいて、Flashディベロッパーとかオーサリングエンジニアとかデザイナーがいると。このようなわけで、部門の名称は営業ベースで相手に分かりやすい呼称を用いるか、あるいは煙に巻くためなのか奇っ怪な名称を使うかのどちらかが多いと思います。

さて、ここでは職種の肩書きについてだけ取り上げるので、まず既知の肩書きを調べてみましょう。

ウェブデザイナー、ウェブディベロッパー、フロントエンドアーキテクト、デザイナー、コーダー、HTMLコーダー、マークアップエンジニア、情報アーキテクト、インフォメーションアーキテクト、フロントエンドアーキテクト、アクセシビリティエンジニア、ユーザーエクスペリエンスデザイナー、ユーザビリティエンジニア、フロントエンドエンジニア、土方 (derog)、イラストレータ

search analyst, search marketing manager, copy writer, art director, digital creative, mobile web designer, web designer, web decorator (derog), web developer, information architect, planner, actionscripter, coder, usability specialist, user experience designer, user interface designer, user-centered designer, interactio designer, information designer, web producer, senior designer, team leader, HTML developer

海外の肩書きは、IABのリストや、CSS でおなじみアンディー・バドさんの記事などからもってきました。

ちなみに、ビジネスアーキテクツさんやミツエーリンクスさんが中心になって提唱している「マークアップ(デザイン)エンジニア」という呼称ですが、結局のところ狭い界隈で「俺の定義はこうだ」みたいな話を何人かが展開したり、セミナーで北斗神拳みたいに伝承しているだけなので、恐らくはコーディングのスキルを持った情報アーキテクト(あるいはプレゼンが得意なだけのコーダーという皮肉な言い方もできる)という感じなんじゃないかと思います。いずれにしてもオリジナルタイトルであって、海外に行っても通用しませんからご注意ください*

* 自分で肩書きの記事を書いておいてナンですが、こういう綺麗事系の会社が提唱してる肩書きって、どうもベタな政治臭がして好きじゃないんだよな。政治をやるならやるでいいから、市井の僕らとしては青嶋刑事みたいに、こういうところもがんばってもらって、業界を引っ張っていってくれと思いたいんですが。どうなんだろう? もちろんこちらも頑張って下から押し上げますが。

まず肩書きについて問題があると思うのは、海外のブログでも一時は盛んに語られていたように、「肩書き=職種」ではないという点です。つまり、「デザイナー」と書かれていても「コーダー」の仕事をしている人はたくさんいて、実態は名刺では全く分からないというのがこの業界の特徴なのです。これは、或る意味で職能を定義するための基準が何もないに等しいということを意味しており、また多くの会社では「職種=職能を満たす技術を保持している」という前提で原価計算の工数単価を設定しておらず、CSS でどれほどコーディングできようと、InDesign と AfterEffects の両方が使えようと考課査定や給与に全く関係がないという実態を如実にあらわしていると思います。

それから、海外ではウェブ制作業務が「ウェブ構築(web development)」という呼称に統一されつつある印象があります。というか日本で言う「ウェブ制作」に当てはまる語句は “web design” くらいしかなく、これを制作プロダクションとして掲げているところは減ってきました。いまどきビジュアルデザインしかできないのでは、まぁ受注が難しいというところでしょうね(海外でも「デザイン」という語に情報設計という意味を含めた上で理解している人は少ない)。求人サイトを見ても、”web designer” とは言え、実際にはコーディングも JavaScript や PHP も書く “web developer” が期待されている場合が多い。イラストレータで「A4に」起こしたカンプ(でも彼らはウェブページのデザインだと思っている)をコーダーさんに投げるといった、或る意味で豪快なデザイナーは日本のウェブ制作プロダクションにしかいないといってよいでしょう。

上記の肩書きを見ていて思うのですが、特にアメリカは職種がやたらと細かくて、制作や開発だけでなく運用系にしても、職種と職位を組み合わせた「シニア~」とか「アシスタント~」とか「~マネージャ」という肩書きが多いです。まぁそれだけサラリーに差をつけて、スキルアップの動機付けにもしているのでしょうね。日本では、いっとき転職のCMで「営業本部長次席代理見習い補佐」とかいった肩書きを揶揄していましたが、まぁデザイナーさんやプログラマさんの多くはこういうものに全然関心がない人もいて、ウェブ制作プロダクションで「昇進」とかを目指している人がそもそもいないという状況になっていると思います。彼らの多くが思い描いているキャリアパスは、せいぜいアートディレクターとか SE までで、そこから先は独立とか専門学校の講師とか派遣社員といった目標を置いていたりするようです。それゆえか、肩書きに頓着する人は営業的な動きをする人を除いてあまり多くないと言えます。現実に、職位が一般正社員(=要するにヒラ)と社長しかないという制作プロダクションも多いので、キャリアパスを自社の中で描きようがない人も数多くいますし、それはそれで別に問題でもなんでもありません。

「肩書き=自分たちの仕事」という擬制に誇りをもてというフレーズは、もちろん管理的な意味合い即ちモチベーションマネジメントのプロパガンダとして使われることもありますが(それゆえ「それが社会人というものだ」というフレーズは、頭から信用してはいけない)、自分たちで暗示をかけていると自覚しており、その効用や欠点を承知している人なら問題はないかと思います。それゆえか、職種・職位にアイデンティティを持とうとか言ってる人もいますが、注意が必要なのは、そういうことを言っている人の中には単にマネジメントのマトリクスを語っているだけにすぎない場合もあり、そしてマトリクスによるマネジメントは既に時代遅れであるというのが経営学の常識だという点は、一般の社員でも押さえておいた方がよいでしょう。縦軸に職種、横軸に職位というヒエラルキーで人を管理するというマネジメントは、実際には多くの事例で失敗しているのです。破綻したマネジメント理論を手軽に持ち込むだけでは悪影響が大きいかもしれません。

こうして見てくると、やはり肩書き一つにしてもリソースマネジメントや IR の影響見込み、それから原価計算や給与規定あるいは考課規定といった広い範囲を検討して、落とし処を見つけなければなりません。考慮する範囲がほぼ自社のステークホルダー全体となるので、安易につけたり、安易にコロコロと替えるようなものではないということが分かります。

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