『ゴメスの名はゴメス』(結城昌治)

2008-05-10 18:23 / books and reviews

書店で見かけて読もうかどうしようか迷っていたのですが、昨日購入して読みました。

ゴメスの名はゴメス (光文社文庫 ゆ 4-1 結城昌治コレクション)

購入すべきかどうか迷っていた訳は、非常につまらないことではあります。他人の話を適当にあしらったり茶化すときに、父がよく「ゴメスの名はゴメス~」と口にしていたことを思い出したからです。いつごろだったか、小学生の頃に初めて聞いたように覚えていますが、「何言ってるんだろう?」という印象があり、やがてそのように意味が分からない一言を発して他人の話をあしらう場合があることを、『がきデカ』でも知ることとなりました。で、僕も「ぷんたみりあ」とか「あてててて」とか意味不明なことを口走って、他人の話をあしらうようになったわけです。今だったら「チラシの裏にでも書いとけ」とか欠伸をして時計を見るとか、非常に親切な分かりやすいレスポンスを返す人もいますが、「お前の話には興味がない」と意思表示するやり方は人によって違うので、なかなか相手にも理解されにくいし、こちらも理解が難しいと実感します。

このように一家庭の事情で気になっていた「ゴメスの名はゴメス」というフレーズを書店で見かけたときに、まず驚いたのは小説だったのかという点です。結城昌治が著した小説の初出は1962年で、僕が生まれる6年前に出ていますし、また僕が生まれる1年前の1967年には、この小説を原作とした松竹映画が公開されています(栗原小巻の初出演作)。僕はぼんやりと昔のCMかポスターのキャッチフレーズだろうと思っていたので、こんな作品を父が小説か映画で見るか読んでいたことに驚いたわけです。僕が小学生の頃を思い出しても、古典文学全集や百科事典といった飾りの書物はたくさんありましたが、小説の単行本は一切見かけなかったので、父は小説や小説を原作にした映画とは縁のない人だと思っていたわけです。

ということで、作品とはぜんぜん関係ない話で恐縮なのですが、60年代のベトナム戦争継続中に見聞きしたこととセットになっていたと思われるので、父にとっても印象深かったのでしょう。

小説の方は、ベトナムの情景や文化などよりも登場人物の描写に力点が置かれていて、なるほど闇夜で手探りのまま前に進まなければならないという状況をうまく表現してあるなと思いました。単純に小説として面白く、一気に読了した次第です。但し、主人公が現地の事情に突っ込んでゆく動機や、誘拐されていた場所から無事に脱出して帰国するまでの描写に、少しご都合主義を感じてしまったのは否めません。

ともかく、ふだんは忘れていながらも頭のどこかにひっかかっていた「よく分からないこと」が、僅かでもクリアになったのはよかった。ていうか、親父に聞けよって話でもありますが。

[2008.5.12]

その後、実家へ行ったときに話を聞いたら、母親が原作の小説を若い頃に読んだそうです。まぁ僕が保育園へ通っていた頃に『資本論』の読書会とかやってた人なので(特に70年代初頭は珍しくもなかった筈です)、興味があったんでしょう。父親は母親から小説の話を聞いたか何かで、「ゴメスの名はゴメス」というフレーズが耳に残ったようです。

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KAWAMOTO Takayuki

Mr. KAWAMOTO Takayuki
also known as philsci
(birth day: Sep 20 1968)
live in Osaka city, Osaka, Japan.

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