『ミトコンドリアが進化を決めた』

2008-03-23 19:07 / books and reviews

寝床で読んでいるだけなので時間はかかりましたが、ようやく読了しました。内容が妥当かどうかの判断は抜きにして、久しぶりに論証として濃い著作を読んだことが楽しい。これに比べると、MDで書いてることはもちろんですが、ウェブやプログラミングについて書かれている本やブログの記事が、いかに「ただのデータ」と印象の描写に終始しているかが分かります。

アマゾンの書評をご覧になればお分かりのように(2008年3月23日時点)、内容の妥当性を検討するようなコメントはまだなく、現在の分子生物学や進化学の一つの仮説として興味深いという評価にとどまらざるを得ないのだと思います。それでも、生物に性別がある理由や、老化のメカニズムについて、単純に「フリーラジカルがあるから」と答えるだけの議論は、この本を読んだ後では通用しないと言えるでしょう。同じ理由から、コンビニなどで広まっているビタミンCやEといったサプリメントが、老化の抑制には全く無力であると納得できます(逆に、サプリメントていどでミトコンドリアの活動や遺伝子の損傷が修復可能であれば、これまで何十億年も全ての生物がビタミンを含む食物を現に摂取してきたことと矛盾してしまいます)。

この本を公平に眺めると、現代の分子生物学は、それほど歴史は長くないわけですが、急速に数多くの知見を蓄積していることを実感できます。また同時に、まだ分からないことも多く、第一線の研究者たちも推測を越えて確かなことが言えない点も数多く残っていることが分かります。こうした大きな見取り図を手に出来るというだけでも、一読する価値はあるだろうとお薦めします。ちなみに、冒頭で出てくる分子生物学の概論は丁寧に読んでおかないと、特に中盤の議論が分かりにくくなります。手にする方の多くは、やはり帯などに書かれた「老化」や「性の区別」といったキーワードに興味をもつのだと思いますが、アポトーシスや老化の箇所で、いくらか分かりやすく経営者と労働者とか秘密警察といった例え話は出てくるにせよ、議論の道具立てを正確に理解していないと、各章の内容を大きな見取り図の中に正しく配置できなくなりますし、地図のどこが(中世の地図みたいに)不確かで保留を要するのかが分からなくなるでしょう。

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KAWAMOTO Takayuki

Mr. KAWAMOTO Takayuki
also known as philsci
(birth day: Sep 20 1968)
live in Osaka city, Osaka, Japan.

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