最近、ブログとかでウェブディレクターという肩書きをよく見かけますが・・・
2006年04月02日 18:10
いつも制作の現場で話になるのは、クォリティーを優先するか納期を優先するかというテーマで、ウェブのディレクターどうしのあいだでもこれがブログやそれへのトラックバックなどで繰り返し話題に上ります。
一方で制作会社は芸術家ではないから一定の水準のものを手早く仕上げるべきとの見方があるし、他方で安い・速いではDTPや昔のワープロ入力代行業者と同じ末路をたどってゆくだけだとの見方があり、どちらにもそれぞれの言い分があります。
まず「生産性」を優先する人たちの側から見てみると、確かに、クォリティー重視の発言をしている人の中には、簡単にいうと超がつくような有名制作会 社で働いているとおぼしき人が多かったり、単なる願望を語っているだけの人もいたりして、大阪の制作会社で働いている人にしてみれば絵空事のような好条件 で仕事をしていると思われても仕方ありません。中には、鼻につくような建前とか自分たちの成功例ばかりを書いている人もありますからたちが悪い(笑。 100 ページにも満たないサイトの予算が数千万で納期が 6 ヶ月後だとか、前金を半額もらっていたらその仕事だけやっていても小さい会社なら食って行けそうな条件なんて、特に大阪を含む地方には殆どころがっていな いですからね。
しかし、品質にこだわるひとびとがコスト感覚に欠けているという書き方は、いささか的を外しているように思います。たいていの発注者は企画の立ち上 げがまず遅いというのはよくあることで、これは相手もサラリーマンとしては凡人だから仕方がありません。客は大切ですが、才能のある人間として扱う必要な どないし、間違っていれば失礼にあたらないよう諭すのが当然でしょう。いくら客が大事でも、1,000 ページ規模のサイトを 3 日くらいでリニューアルできると思っているような客もいるのは確かで、そういう客にいつまでも頭を下げているような会社なら、ウェブ制作についてどうのと いう以前に、経営や営業のスタンスが間違っているわけで、そういうところは制作スキル以前に会社としてダメなんですよ。「品質」という言葉を使うと、生産 性が優先すると思っているひとたちは、ついついデザインの良さとかユーザビリティとかを連想してしまいがちなのかもしれませんが、品質にこだわる人の発言 には、一定水準のサイトをつくるためには必要最低限の期間が必要だと言っているにすぎない場合もたくさん見受けられます。
どこまでが一定水準なのかは制作会社によっていろいろあると思いますが、新規にサイトを立ち上げるときには、できれば現状の分析から戦略のフェイズ も含めて、現実的な日程を確保しながら作業をすすめていかなくては品質の保証が難しいというのは、どこの制作会社も同じでしょう。速い・安いで売っている 制作会社にいると、どうしても生産性だけが重視されてしまい、そういう連中の仕事に限って大したものはないのが実情です。孫請けに投げておいて生産性もク ソもないだろう、と言いたくなる会社も多い。
実際、「短納期とクォリティーのバランスがどうの」と書いている会社が作ったであろうと思われるサイトを見ていても、サイト構築やデザインの点だけで見ても、仕事が速いのではなくて、デザイナーの思いつきや思いこみだけで制作していると しか思えないサイトもあります。そら、考えなくてもいいんだから速いのは当たりまえ。ウェブ制作の業界を自分たちで「オペレーター業界」にしようとしてい る、という危機感がまるでない。そういう意識の連中がやっている仕事からは、デザインの点でも、あるいはサイト構築やシステム、ユーザビリティからマーケ ティングに至るまで、ことごとく中途半端なものが大量生産されます。
だいたい、生産性だけをうんぬん言っているひとびとは、そのくだらんサイトを評価される段になって「いや、納期がタイトだったから」とか、「自社に クォリティの高い制作物をつくれる人員がいなかったから」といった言い訳が一切できないのですが、彼らはどうやって弁解するのでしょうか。そういう連中に 限って、客観的な評価を免れたところでごちゃごちゃと言っていることが多いのも確かです。自分たちのつくったサイトを見せてみろと言われても出せないで しょう。アクセス解析や顧客満足度の調査も果たしてやっているかどうか疑わしい。
繰り返し言いますが、生産性だけをごちゃごちゃと言っている連中がつくるサイトに、ロクなものはありません(孫請けに落としている会社は論外)。だ いたい、短納期で制作できるなんてセールス文句は自分たちが「オペレーターに過ぎません」と宣伝しているようなもので、サイト構築の戦略ポリシーをもって いないか省略して仕事をしていますと公表しているようなものです。健全というか巧妙な会社であれば、「なんたらフェイズ」といった制作過程をあらかじめア ピールしつつ、余裕のある納期で仕事を受けられる努力をするものです。だって、そこの仕事だけで食ってるんじゃないし。結局、短納期とかに頼っている会社 は、顧客や代理店の言いなりのまま無茶な納期の仕事を「やっつけていく」のが実態と言ってもよいでしょう。「ドッグイヤー」とか何とか利いた風な嘘っぱち を口にしているのは、自嘲の意味でもなければ、そう思わないとやってられんからではありませんか?
要するに、つまらん会社にはつまらん社員が集まってきて、「サイト制作は生産性が重要だ」という偏った考え方を、偉そうに「業界標準」だとか、こそ こそとブログとかで吠えているのが、うじゃうじゃと増えてきた「ぶっちゃけウェブディレクター」たちの実情です。まぁ確かにいろんな話を見たり聞いたりし ていると、大阪にはそういう制作会社が多い。少なくともディレクターのブログやサイトを見ていると、こういう「顧客や代理店に足下を見られっ放し」の制作 会社が実に多いという印象をもちます。で、人を募集するときにも「この業界はやはりこういうのが当たり前になってるからな~」と言って、その種のオレオレ 業界標準に従えるかどうかが「ウェブデザイナーやプログラマーの資質」みたいに言われたりするわけですね。まぁ企業側は企業にとっての好条件で人を雇いた いから、残業手当はつかないのが「業界標準」だと言うし、いちおう終電まで勤務していたら帰宅してもあれこれ陰口をたたかれないというように、社内の雰囲 気をつくっておこうとか、いろいろとやるものです。
大阪だけじゃなくて、どこの地方でもそうだと思いますが、下請け根性っていうの? 結局自分たちでは納期のまっとうな交渉もできなくて、たとえ時間をもらっていたとしても、クォリティの高いものを作れない(かもしれない)っていう会社で 働いていると、結局拠り所は「生産性」とか「短納期」という言葉しかなくなるわけで、逆に「速いからこれくらいでいいでしょ?」という言い訳になっている と思われるわけです。
こうした吉害じみた感覚をさも「業界の常識」みたいに書いている愚かな連中は多いのですが、典型を二つだけご紹介しておきましょう。
http://world-w-words.com/blog/mt-tb.cgi/141
まずここ。生産性が重要なのは、「うまいラーメン作るから、5時間待て、という店がないのと同じです」ということらしいですね(笑。まぁ・・・飲食 業について、常識的な仕事内容も分かっていない小僧の意見など取り上げても仕方ありませんが、メニューが決まっている店は決まっているからこそ、前の晩か ら何時間もかけて食材を仕入れたりスープを煮込んでいるのであって、客に注文されてからスープを作り始めるラーメン屋などいないのは当たりまえでしょう。 もし速く料理が出てきても、出来合いのものがあってそれを盛りつけていれば、もともとの食材をつくるのに時間がかかっていることは誰にでも分かります。あ るいは、既にできあがっているチャーシューやモヤシを 5 時間もかかってどんぶりに盛りつけるラーメン屋という想定でたとえ話をしていたとしても、はじめから比喩として使い物になりませんよ。逆に、敢えてわざと 悪意のある比喩を使えば、この人たちはカウンターの客に「とんこつラーメンひとつ」と注文されたら、5 秒で出すのがよいプログラマーやデザイナーだと言いたいのでしょうか。
こういう連中の「やっつけ仕事」とラーメン屋さんの仕込みや盛りつけを比べるなど、失礼きわまりない。飲食店だろうと家庭だろうと、料理や調理という作業が何をしているかも知らない非常識な人間に、仕事としてのウェブ制作をうんぬん言う資格などないですね。
あとまぁ・・・かなりイタいけど、もう一つ。
http://app.blog.livedoor.jp/irielife1/tb.cgi/50335158
こういのも。「正直、Web制作って時間をかければ誰だってできるようになるものです。」とか言ってる時点で、いかにこの仕事をなめていて「生産 性」しか拠り所のない仕事をしているかが分かります。つまり、自分が「誰にだってできる」ていどの仕事しかできないレベルで判断してしまっていることが分 かっていない。大阪のケチくさい企業にしてみれば、こーいうただのパソコンヲタクあがりみたいなのが、捨て駒としていちばん使いやすいだろうよ。
ありていに言って、専門学校を出たくらいの経歴でウェブの制作をはじめてもよい仕事がなかなかできない理由は、生産性よりも寧ろ、知識や「ウェブ制 作に特化したものの考え方」が不足していたり、あるいは単純によしあしを判断した経験が不足しているからではないかと思っています。後者について言うと、 見栄えという意味でのデザインだけについて言えば、「よいサイト」をたくさん見て、その中で自分が「よい」と思う基準を色々と修正したり煮詰めたりして、 実際に自分でもつくってみるという、広い意味での経験不足ですね。
いまの中小の制作会社は、実情としてはそうした経験を「帰宅してから」とか「休日」に本人がどう過ごすかに頼っているわけですね。残業どころか自宅 でも本人の強迫観念的な責任感に頼りっぱなしで、昔もいまもこういう『プロジェクトX』的な滅私奉公は好まれているわけですね。もちろん、はじめから自主 的に上で書いたような経験を積んできている人ならよいのですが、専門学校じゃなかなか分析とかはやらないことが多いでしょうから、ツールの使い方に終始し ていれば仕方ないとも言えます。誰かが教えないと、自主的にできる人だけが仕事をしている業界ではないし、そういう人だけを雇用するわけにもいかないで しょう。
ていうか思うのだけれど、なんかいろんなところで「ディレクター」と自称してブログとか書いてるやつは多いけど、納期に迫られて尻を叩く毎日をぼや いているだけの連中に、ディレクターを名乗る資格はないと思いますがね。そんなもん、ディレクターじゃなくてバイトリーダーだって。そもそもなんで、て めーの会社にそういう人材が来てしまうのか。そこを見てない気がしますね。納期とか生産性しか口にしていない会社には、そういう人が集まりがちなんだって 分かってないみたいですね。
