黒須教授のUser Engineering Lecture
2009-02-20 00:00 /
翻って考えてみると、ウィキペディアのような百科事典は、当然ながらドメインエキスパートがそのコンテンツの執筆をすべきである。
via usability.gr.jp
わざわざ翻って考えるまでもなく、そんなことにはなっていない。Wikipedia での書き方が分からんくらいならともかく、コンセプトすら理解していない人が、偉そうに子供のブログエントリーみたく「べき」とか書かない方がよいと思うぞ。
Wikipedia の項目の多くは、別にドメインエキスパート(大学の研究者やシンクタンクの研究スタッフ、あるいは何らかの理由でそれを糧に飯を食ってる人)が書いているわけではなく、その項目について「よく知っている」と思う個人が、めいめいに書いてお互いに修正したり議論して調整しているのだ。そうでなければ、Wikipedia はブリタニカのフリー版でしかなくなる。あるいはヒマな研究者が自説を開陳するために使うグループブログていどの意味合いしかなくなるだろう。そのようなものは Google が既にやっており、ご存知のとおり現在は事業としては明白に失敗したと見做されている。
そして、Wikipedia では誰もがエキスパートとして責任をもって「執筆」しているわけではないので、それゆえ Wikipedia の記載は軽々に信頼してはいけないという点も留意しておかなくてはならない。リンク先も訪れてみたり、あるいはリンクの選定自体に偏りや不公正な意図がないかどうか、改めて他の検索エンジンで調べたりして、はじめて誰かに何かを伝えるときの参考にできる。もちろん、ふだんは自分のためだけに使っているから、それほど個々のエントリーについて熱心に「裏をとって」いるわけではない。そうした「裏をとる」ということも Wikipedia の仕組みには備わっているから、信頼してよいレベルというものはあるからだ。
というわけで、その分野の専門的な知識を開陳したいなら、自分のサイトかジャーナルアカデミズムでがんばりなさいという話。研究職というものは、本来はそういう場所での業績を上げることが望ましいはずで、国内の学界から仲間はずれにされているなら海外のジャーナルに投稿することもできる。(もちろん、黒崎さんがという話ではない)
プロフェッショナルの学者が Wikipedia の項目を埋める責任などない。そんなヒマがあるなら、大学の授業や演習をがんばって目の前の学生と語り合う方が職業人として優先すると思う。(あまり使わない言葉だが、「絶対に優先する」と言ってもよいくらいだ)
