絲山秋子『沖で待つ』
2009-02-27 00:00 /
特にこれという動機はなく、買って読んでみた。そして、特にこれという感想も無く読み終わったのだが、印象に残った点は幾つかある。
まず一作目の「勤労感謝の日」に見られた、いかにも文学者っぽい、いわゆる「女性らしからぬ表現」というやつだ。つまり、女性がこういう粗野な表現をするものではないという、どこかにあった「昔ながらの性別意識」に敢えて異議を唱える文体というか、その種の赤裸々さをブンガクとして押し付ける技巧に思え、違和感を感じる。もちろん、何かにつけてマンコだチンカスだウンコだと心でつぶやく人は性別を問わず、いてもいい。しかし、それをあからさまに言葉で書き留めることが男女を問わず昨今のとんがった文学者の流行みたいに見えるのは、なんだか凡庸でいまいちの印象が強い。
芥川賞を受けたという表題作にしてもそうだが、これらの作品から「はたらく」ということについて何も感じなかったのは、少しばかり残念だった。別に同じサークルの仲間を描いた大学生の話でも良かっただろうし、同じ特養ホームで寝起きしている老人同士の話でもよかった気がする。特に職場の同僚という下地があってこそ成り立つ話だとは思えなかったので、帯にあった「すべての働くひとに。」というフレーズは、失業者や会社の同僚が出てくる話だという、かなり単純な理由で書かれたに過ぎないのだろうと思った。
最後の「みなみのしまのぶんたろう」は、モブ・ノリオの「介護入門」を読んだときにも感じたことだが、短編とは言え最後まで読み続けられるように書かれているのだろうなと感心した。したがって、三つの中でどれが好きかと言えば、この作品になる。薄ら寒い気がしてくる点もよかった。

