米国の流行語大賞
2007年09月25日 00:20
ブックマークの整理をしていて、アメリカ方言協会(American Dialect Society)という団体が毎年発表している新語大賞みたいなエントリーをみつけました。1990年から辿ってゆくと感慨深いものがあります。それはそうと「毎年発表」みたいに、漢字が繋がるのはどうしても避けたくなる傾向があって、これはどう言い換えればよいのだろう・・・と、ここだけで10分ほど悩んでしまうこの頃です。
それでは、アメリカ方言協会の発表を見てみましょう。カテゴリーごとに発表されるため、この記事では「今年の言葉(Word of the Year)」だけご紹介します。
- 1990 - bushlips
- 1991 - mother of all
- 1992 - not!
- 1993 - information superhighway
- 1994 - cyber, morph
- 1995 - world wide web, newt
- 1996 - mom
- 1997 - millennium bug
- 1998 - e-
- 1999 - Y2K
ちなみに、2000年は “Y2K” の他にも過去1世紀の言葉大賞と過去1000年の言葉大賞も選ばれていて、それぞれ “jazz” (Word of the 20th Century) と “she” (Word of the Past Millennium) が受賞しています。
- 2000 - chad
- 2001 - 9-11 (September eleventh)
- 2002 - WMD (weapons of mass destruction)
- 2003 - metrosexual
- 2004 - red state, blue state, purple state
- 2005 - truthiness
- 2006 - plutoed
それぞれ見てみると、90年の “bushlips” は「ブッシュ口(ぐち)」でそのまんま。意味も、「不誠実な政治的レトリック(いわゆる “bullshit”)」のことらしいです。不誠実でない政治家がそもそもいるのかどうかという話はさておき。91年の “mother of all” には “greatest” という意味が紹介されており、感覚的には分かるし、昔からこういう言い回しはあるし、もちろん宗教のニュアンスがあることも分かる(もともとイラクのフセインのフレーズから来ているらしい)のですが、日本語としてどう訳せばよいかは非常に難しい言い方です。実は英語って専門用語なんかよりも、こういう簡単な単語を組み合わせた表現の方がめちゃくちゃ難しい。さて、92年は “Not!” ですが、これもまた「否定の表現」としか解説されていないので、「そのまんまじゃねーか!」という突っ込みを入れたくなりますが、Wikipedia にも “just kidding”(「冗談だってば」)くらいの意味しか載ってませんね。謎だ。で、93年はお馴染みゴアさんの例のもので、94年は “cyber” と “morph” です。”cyber” は陳腐化しているからどうでもいいとして、”morph” は画像処理の「モーフィング」ということで、発音から綴りができた例に入るのでしょうか。続いて95年も二つの言葉が選ばれています。”web” なんかどうでもいいけれど、”newt” は寡聞にしてぜんぜん知らなかった言葉です。下院議長のギングリッチさんの通り名(Newton = Newt)だったんですね。アメリカってエスタブリッシュメントでも通り名で仕事するから、改めて面白いですね。日本だとタレント議員が逆に本名で政治家やるくらいですからねぇ。で、96年の “mon” には “soccer mon” という用例がついていて、これは『あなたのTシャツはどこから来たのか?』という本で意味合いを知りました。訳すときは「~ママ」としかできないように思いますが。97年の大賞は99年の “Y2K” と同類なので、別に説明する必要もありませんね。98年の “e-” も、いまでは使う方が古臭い。この頃から、X 何某とか i 何某とか、ガンダムのぱちもんみたいなネーミングが流行りだしたように思います。で、そうやってネーミングにすらクリエイティビティを発揮できないウジ虫みたいなベンチャーが総倒れになって、やはりアップルとかが生き残るという結果になるのですね。
2000年の “chad” は、アメリカ大統領選挙で物議を醸した、投票用紙をパンチでくりぬいた時の紙屑のことですね。01年の9/11は説明不要でしょう。02年の「大量破壊兵器」も Wikipedia に詳しく載っています。03年の「メトロセクシャル」は知らなかったです。男性用のエステとか化粧品が TV CF に出てくるようになったのはもっと前からだったような気がするので、既に消費文化としては日本の方が先行して地獄に突進していってるんですかね。04年の表現はいかにもドメスティックな表現なので、まぁ別に知ってなくてもいい言葉使いですね(意味しているところは理解すべきだと思いますが)。05年の “truthiness” は、意味合いとしては皮肉めいていてニュアンスも分かるのですが、これを翻訳するとなると急に難しくなります。状況によって訳し方を変えないといけないのでしょうね、こういう表現は。例えば、
- I’m convinced that the former Prime Minister Abe was right to serve us a traditional moral in Japan.
- It’s a truthiness only for you.
といった場合に、「それって『正しい』っていうより、あんたがそうして欲しいだけでしょ?」みたいな突っ込みを入れるときに使うのでしょうね。あるいはよく教育とか労働関係の討論番組で、発言者個人の「現場の意見」とか感情を「庶民」とか「国民」のコンセンサスにまで強引に普遍化しようと妄想する人がいますが、「それってアンタの現場だけでしょう?」とか「庶民ってあんたのことなのか?」と突っ込む時にも使えそうです。さて最後に昨年の “plutoed” となりますが、これは昨年の一時期を賑わせた冥王星(Pluto)から来ており、「降格させる」といった意味で使われているようです。
これだけを見てきても、悲喜こもごもで興味深いですね。今回は the Word of the Year だけでしたが、他にも色々とノミネートされていますし、カテゴリーもありますから一見の価値があります。
