Scribble at 2017-03-13 14:29:01 Last modified: 2022-09-20 09:30:20

なぜ京大生は「最近地震が多い理由」を答えられなくなったのか?

高校の「地学」つまりは大学で天文学や宇宙論、あるいは地球科学や惑星科学と呼ばれる広範な分野に展開していく科目は、昨今の受験では冷遇されているらしい。よって、筆者が地学の基礎知識を多くの学生に求めたいと訴えるのは(あくまでも利害関係から言って、という但し書き付きでは)わかる。しかし、それを「中卒からやりなおせ」というのは学生の受験生としての判断を無視しており(彼らは京都大学へ入るために勉強してきたわけであって、最初から地球科学を専攻するつもりの高校生なら、受験科目に地学が入っていようとなかろうと自主的に勉強しているものだろう)、それは学問の厳しさを伝える方法としては間違っていると思う。

筆者が京大の学生にどう話をされたのかは、具体的には記事から分からないので断定は避けたいが、「近頃こんなに地震が多いのはなぜか?」という質問をされると、やはり答えようがないとも言いうる。第一に、「こんなに地震が多い」と感じているのは、恐らく東北から関東の太平洋側に住んでいる人たちだけだろう。別に中部や北海道や沖縄で(もちろん熊本でも大きな地震はあったにせよ)地震が頻発しているという印象はないだろうし、ましてや京都で有感地震など殆ど起きていないだろう。地域を限定せずに「こんなに地震が多い」などと言われても、多くの学生からすれば「そんなに地震が多いのだろうか」と戸惑うだけでしかない。地震が少ない自分たちの出身地での経験と「こんなに地震が多い」というフレーズとの比較ばかりを気にしてしまうと、恐らくは東北で大規模な地震があったという事実が1回限りの出来事として除外されてしまい、余震は思考から外れてしまうかもしれない。また、少し地震について知っている学生にしても、そもそも日本では毎日のように軽度の地震はどこかで起きているので(有感地震は1日に平均して5回ていど起きている)、専門家が「こんなに地震が多い」と言うからには何か特別なメカニズムがあって、東北の地震と余震といったありふれた知識では答えられないのではないかと思うかもしれない。

ちなみに、この方が書いたという『地学ノススメ』(講談社ブルーバックス)は書店で目次を眺めてみたことがある。懐古趣味の表紙はいまいちだし、内容も、このところ続々と出版されている地質編年学や進化論や気候学や人類学を含む「地球史」の一つという印象で、あまりオリジナリティは感じなかった。

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