Scribble at 2022-12-04 12:12:15 Last modified: 2022-12-04 21:55:40

髭を剃り始めたのは、いつ頃だっただろうか。恐らく高校時代ではなかったかと思うのだが、さほど濃い髭ではなく、電動シェーバで軽く「削る」ような感覚で剃っていたと思う。少なくとも泡を立てたりプレシェーブ・ローションを使っていた記憶が全くないからだ。どちらかと言えば、父親が使っていた Shick の剃刀で利用する替刃のケースが、洗面所に置いてあった記憶が最も強い。実際に父親が髭を剃っている場面を見かけたことは殆どないけれど、恐らくは昔の1枚刃の T 字剃刀だったと思う。わずかに、T 字剃刀の刃を父親が交換していた様子を覚えている。

それから、僕自身は大学を出て30代くらいまでは電気シェーバしか使わなかった。しかも、ローションを使った記憶もないから、これで肌が極端に荒れなかったのは幸運なのだろう(もともと高校時代にニキビを下手に処置したせいで、顔の肌は多少なりとも荒れていたのだが)。その後、ようやく T 字の剃刀を使うようになって、電動シェーバと比べた使用比率がどんどん逆転していって、ここ4年ほどは電動シェーバを全く使わなくなった。連れ合いからプレゼントされた電動シェーバではあるが、そろそろお役御免である。電動シェーバを使う比率が下がっていった明白な理由は、替刃の「外刃」と呼ばれるカバーが破損しやすいからである。押し付けてしまって余計な力がかかってしまっているからなのか、外刃の端が1年ほどすると欠けてしまい、大きな穴が開く。そのままだと高速で回転する内刃が皮膚を切ってしまって危ないので、もちろん交換である。しかし、Braun の替刃は外刃だけでは売っていないため、1年おきに4,000円くらいの出費となってしまう。なんだか勿体ないと感じて、T 字の剃刀の方がリーズナブルではないかと思えたわけである。でも、よく考えたら実はそうでもない。T 字の剃刀も替刃は4個セットで3,000円くらいするが、新型コロナウイルス感染症の蔓延という事情もあって外出する機会が減ったおかげで1週間に1度くらいしか髭を剃らないのだが、それでも4個の替刃で半年くらいしかもたない。なので、1年で2回の買い足しで6,000円なら、電動シェーバの替刃を毎年のように交換するよりもコストがかかっている。しかも、1週間に1度しか剃らず、しかもその頻度でも4回ほど使えば交換すべき刃を2ヵ月くらい使い続けるのだから、本当なら T 字剃刀の方がもっと高コストの筈だ。

だが、それ以外にも電動シェーバを止めた、それなりに正当な理由がある。もちろん、明らかに仕上がりが剃刀よりも悪いからだ。電動シェーバは外刃と内刃のあいだに摩擦が起きないよう隙間がある(それでも剃るときに外刃を押し付けるから、どうしても内刃が外刃に当たってしまうから、そのうち外刃が破損してしまうのだろう)。それに加えて外刃自体の厚みがあるから、髭を剃り残してしまう。これを気にしてシェーバを肌にきつく当てたり何度も同じ個所を剃ると、もちろんローションを使おうと誰でも剃刀負けして肌が荒れてしまう。というわけで T 字の剃刀を使ってきた。Shick の「HYDRO5 BASIC」という製品を愛用してきたし、プレ・シェーブ・ローションとアフター・シェーブ・ローションはメンズのケア用品として色々と使っている Gatsby のローションを使っている。

そうして、そろそろ一枚刃の西洋剃刀(日本剃刀)を試してみようという気になった。髭剃りの機会が頻繁になくて、剃るとしても急いで処置するような事情が殆どなくなったおかげで、時間をかけて丁寧に髭を剃るという手間をかけてもいいなと思えるようになったわけである。実は、以前も試してみようと思ったことはある。理髪店で髭を剃ってもらう機会も減ったのだけれど(ここ数年は家で連れに散髪してもらっているため、4,000円かかる理容室どころか1,100円の QB House にすら行かなくなった)、やはり職人に剃ってもらうと仕上がりが奇麗だし、剃っている間も気分がいい。なぜか20代の一時期だけ、剃ってもらっているときに理髪師が悪魔に乗り移られたのか変貌して、首を掻き切られるという変な強迫観念があって、他人に髭を剃られるのが怖かった頃もあったのだが、もうそんなことは感じない。なんにせよ、剃刀で剃ってもらうと出来栄えが良いことは分かっていたので、自分でもやってみたいとは思った。でも、これも今となっては錯覚なのだが、一枚刃の剃刀が5枚刃の T 字剃刀よりも危険に思えたのだ。刃が肌へ直に当たっていて、刃を押してゆく角度や力も変わらないのに、なぜか一枚刃だと顔に刃が切り込んでしまい、肉を抉ってしまうように思えたからだ。もちろん一枚刃の剃刀で顔の皮膚を切ってしまうことはあるだろう。でも、T 字の剃刀でも毎回のように鼻の下から血が出ていたりするわけで、同じことではないか。そう思うと、さほど一枚刃を使うことに躊躇はなくなった。

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