2017年06月08日16時33分 に初出の投稿

河本孝之Takayuki Kawamoto

Last modified: 2017-06-08 16:33:03

当家は僕が中学に入った頃から高校を出るまで6年ほど薬店を営んでいた。東大阪市の東花園という町にあった、大発ストアというスーパーの一画を借りて、主に母親が切り盛りしながら、印刷会社に勤めていた父親も頻繁に手伝い、僕も休日や特価セールの日には倉庫から商品を運んだりレジを打ったりしていたのを覚えている。両親は、もともと結婚するまでは渋谷の駅前にある三千里薬局に勤めていたらしく、母親が化粧品、父親が薬品の部署にいたらしい。それに、母親は準看護士の資格もあるため、薬店をするだけの基本的な実務能力はあったらしい。しかし、二人とも薬剤師の資格はないため、よくあることだが薬剤師を雇って名義だけ貸してもらっていた(こういう業態では調剤をしないから「薬店」とか「店舗販売業」と言い、事業主が薬剤師の資格をもっていて調剤もできる「保険薬局」ないし「薬局」とは区別される)。

ということで、数年ではあるけれど薬店の息子として接客業にも少しだけ携わって、いつ頃からか「大正漢方胃腸薬」や「正露丸」の臭いがごくありふれたものに感じられるようになった。考えてもみれば、僕は幼い頃からスーパーマーケットで野菜や精肉や鮮魚のコーナーにあるショーケースの、冷気が出てくる箇所の臭いが大好きだった。これは自分でも訳が分からないのだが、子供の頃は買い物へ連れて行ってもらうと、こういうケースの冷気口に顔を近づけて、「ちゃんとしたいい臭い」がするかどうか確かめていた。

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