2017年04月18日12時46分 に初出の投稿

河本孝之Takayuki Kawamoto

Last modified: 2017-04-18 12:46:44

僕がフリーランスから会社員に戻った3つの理由 —— 働き方シフト[フリーランス編]

こういう記事は、それこそもう大昔から繰り返されている話なんだよね。特に IT やウェブあるいはデザインでも広告でも報道でも出版でもいいけど、その手の業界って業務知識にしても働き方にしても、ノウハウや知恵が客観的な評価と共に蓄積しないという特徴があると思う。学校を出た人々が仕事の具体的なやり方を知るには、個々の会社でそれぞれバラバラな、徒弟制度的に外部からの批判にさらされないクソ常識が北斗神拳のように伝承されるか、一部の商圏でしか通用しない商慣行を、いかにも業界標準であるかのように喧伝している通俗書を読むかのどちらかで、実際にそういう業界へ入る前に学生諸君が仕事の内容を体系的かつ客観的に知る機会や手段は殆どないし、知ったところでそれの是非を判断する基準すらない。本来は会社法とか労働基準法という規準はあるのだけれど、「規準」と「基準」は違う。簡単に言えば、僕らが書籍やオンラインのページで学べるのは、せいぜい建前としての法律や業界標準と呼ばれるものだけで、現実の「基準」は個々の会社によっても異なるし、そもそもそういう基準が規準に照らして必要だと自覚している人すら少ないと思う。

しかし、それはそれとして、この記事に登場する若者の話は基本的なところで業界の事情とは無関係におかしい。そもそも就業年数がたったの二年半では、はっきり言ってデザイナーとしてはアマチュアの類でしかなく、申し訳ないが「ウェブデザイナー」などと称していても場末のラウンジのホームページを作るくらいが関の山で、ナショナルクライアント案件のデザインなど全く任せられない。つまりこの記事で紹介されている事例は、アマチュアが企業就職しないでフリーランスとして稼ぐのは難しいという、はっきり言って当たり前のことでしかない。子供が商業デザインなり仕事を舐めてるのはいまに始まったことではないが、こういう(気の毒だとは思うが)愚かな若者に下駄を履かせたり、無能を意味もなく制度の被害者扱いする「やさしい」大人がつまらない正義感を振り回すような記事を書くというのは、「昔からあること」と言って済ませるわけにはいかず、それこそ本当の弱者を保護する余裕を維持しなくてはいけない社会を防衛したり発展させるために、却って邪魔となる。

「デザイナーとして独立したのに、デザイン以外の業務が多すぎる」というのは、それこそフリーになって失敗した人が必ず口にすることだ。この手の「大先生」たちは、自分が何者かのつもりで絵を描いたりしていればお金が入って来るという、いまどき「漫画的」と描くことすら漫画家に失礼だと言えるていどの幼稚さで独立してしまう。独立することにファイナンスや法務上のリスクがあるのは確かだが、それよりも巨大なリスク、つまりは自分自身の無自覚で巨大な「無知」というリスクは、世の中がどうなろうと全くどうにもならないことだ。

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