やちまた
2007-10-08 06:54
はじめに
評論家の呉智英さんが『読書家の新技術』という著書の中で、『やちまた』という本を高く評価していると知りました。その当時はどういう内容なのかぜんぜん知りませんでしたが、或るとき「そんなに言うなら読んでみよう」と思い立ったのです。検索してみると品切れ状態だったので、神奈川の古書店から取り寄せてみました。やってきたのは河出書房新社の上下巻で、内側の表紙を薄い紙でカバーした、古書店の品物によくある体裁の書籍です。カバー代わりの紙の内側にうっすらと見える本表紙には、古文書らしき文字が並んでおり、いかにも古書という感じがしました。
実は、実際に中身を紐解くまで、わざとどんな内容の書籍なのか知らずにいたのです。表紙をめくると、扉には紫の波文様に白地で「やちまた」と書かれており、まるで水木しげるの妖怪漫画みたいな体裁でした。一瞬、キワモノかと思ったのですが、すぐに続けてページをめくると「本居春庭肖像画(部分)」とあって、見慣れぬ人物の肖像画があります。もちろん「本居」とくれば本居宣長だという類推はできますが、本居春庭がいったい何者なのかは本文を読むまで謎のままでした。
こんなきっかけで本居春庭という人物がいたことを知ったのです。それにしても、本居春庭自身の人生や業績もさることながら、彼を紹介した『やちまた』の著者である、足立巻一という人物の人生や業績も、『やちまた』を通して実に興味深く読み進めました。そのような次第で、ここでは本居春庭と足立巻一のどちらも取り上げる価値があろうと考え、両者に共通のキーワードとして、当然かもしれませんが「やちまた」を選びました。
『やちまた』について
足立巻一さんの手になる『やちまた』は、もともと1974年に河出書房新社から単行本の上・下巻として出版され、そののち1995年に朝日文芸文庫から再刊されていますが、どちらも版元では品切れまたは絶版の扱いとなっており、2007年現在は古書店から入手したり図書館で借りるしかありません。なお古書店の検索サイトで探すと、朝日文芸文庫版の方が河出書房新社版よりも入手困難です。文庫なので、単行本よりも安価だし早く売れてしまうからだろうと思います。一読したいだけなら公共図書館で探してから借りる方がよいでしょう。ただ、どこの図書館でも置いているとは限りませんので、すぐに入手したい場合は単行本を古書店の検索サイトで注文すれば、振込先を知らせるメールのやりとりなども含めて一週間もかからずに入手できる筈です。僕が注文したときは上下揃いでちょうど 4,000 円でした。
